[携帯モード] [URL送信]

夢で逢えたら(短編)
閣下は恋バナが苦手B
「いや、その、任務をないがしろにした事は勿論ありませんよ?ただ・・・・・・」
少し言いにくいのか、口ごもった。

「ただ、何だ」
「任務に私情は持ち込みませんし、こっちから誘った事は誓ってないです。だが、どうしても・・・邪険に出来ない誘いもあるんですよ。任務を遂行し、身を守る為には・・・・・・」

自分は諜報任務に就いた事がない。いつも命令を下す立場だ。その任務に就いた者しかわからない苦労もあるのだろう・・・・・・。
グウェンダルは部下の言い分にそれなりに納得し、冷たい視線を切って書類に戻した。

「では、お前のそういった経験は、殆どが一夜二夜の出来事で、姫との関係には比べるに値しないと考えていいんだな?」

「正直・・・本気で心から必要だと、傍に居て欲しいと思ったのは姫様だけです。たとえ身分違いだと言われても、これだけは譲れない。イイ年して情けねえけど、必死なんですよ、オレ」

ヨザックの本心を聞いて、グウェンダルは複雑な気持ちになった。

自分の異父弟の父親は人間だった。そのおかげで弟は部下と同じく人間の血が混ざっているが、自分にとっては大切な弟だ。加えて、国にとっても戦時中には重要な役割を果たしてくれた。
それは大事な部下にも言える事で、『魔族』として国に尽くしてくれているにも関わらず、いざ個人的な問題となると、相手を自由に選ぶ事さえ出来ない。
近年では自身の母親のおかげで『自由恋愛』が認められつつあるが、長く辛酸を舐めてきた者にとっては、自分を卑下せずにはいられないのだろう。

そんな思いをヨザックや鞠花にさせている、その事実がグウェンダルには少々堪えた。

「いくら周りが反対しようと・・・自分の信念をねじ曲げる必要はない。誰も傷付かんのなら構わんが、大事な者がそれによって傷付くのなら、護るべきは・・・国や立場ではない。まあ、大きな声では言えんがな」
常より少し柔らかな、そんな上司の言葉にヨザックはすぐに答えられずにいた。
その代わりにと、丁寧に頭を下げる。

「ここまでの質問で、お前の姫に対する想いが如何に強いものか重々承知した。これをもって、猊下も眞王陛下に全てを報告されるだろう」
「それじゃあ、もう面談は終わりと言う事で?」
「ああ。もう、下がってい・・・・・・」
「閣下?」
グウェンダルが、手元の書類の三頁目を捲った所で、言葉をのんだ。
「グリエ・・・・・・。何度も言うが、『これ』は私がしたくてしている事ではないからなっ!?」
「はっ、はい!」
額に汗をかいて必死に訴えるグウェンダルに、ヨザックはただ短く返事をするしかなかった。

「まだ質問事項が残っていた・・・・・・。その質問とは・・・何と言うか、うっ・・・・・・」
完全に言葉に詰まっている。

「何です?今までの質問以上に言いにくいのがあるんですか?ああ、猊下も人が悪いっすよねえ。全部閣下に押し付けちゃってー」
少しでもこの場を和らげようとおどけてみせるが、グウェンダルの耳には全く聞こえていないようだ。

「お前と・・・姫との、その、あの、あー・・・・・・。避妊はしてるのか・・・・・・?」
「はぁっ!?」

思ったよりも大きな声が出てしまったが、そんなのもう気にしていられない。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!