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夢のまにまに(連載)
副業:記憶再生師?
ガチャッと金属音がしたと思ったら、幹の後ろから銀色に輝く剣が伸びた。

『誰だぁ?こんな朝っぱらから歌ってるお気楽な奴はよ』

また外国人だ!!と構えた少女の目の前に現れたのは、それはもうロッキーかターミネーターかと思うくらいマッチョな金髪男性。


 アクション映画に出てくるハリウッドスター・・・・・・?
 いや、アイスホッケーとかにもいるよね、こういう格好良い外国人。
 あ、ホッケーはプロテクターつけてるからあんなにマッチョなのか。この人は天然マッチョね、じゃあ。
 なんにせよ、昨日からやたらとマッチョに縁があるなあ・・・やっぱり、食べてるものが違うのかしら・・・・・・。


まじまじと自分を見つめる少女に向かって、金髪マッチョが声を荒げた。

『おいおいおい、こりゃまた眞王サマのお戯れってかぁ?』
呆れたような表情で軽く天を仰いでいる姿がまた、様になっている。
と思ったのも束の間、少女は思考も身体も凍りついた。

金髪マッチョが、骨ごとゴッソリ切り落とせそうな剣を自分に向けて近付いてきたからだ。


 ちょ、ちょっと待ってよ!私、今アナタの事格好良いって褒めてたのよ!そりゃ、心の中でですけど・・・・・・。
 ていうか、出会って数秒で剣を向けるのは、いくらなんでもやりすぎじゃない?こっちは丸腰で、見た目は男装してても実は女なのよ――・・・


「・・・あっ!?」
思わず少女は頭を押さえた。

迂闊だった。
カツラは外してるし、少女の豊満な胸は、サラシで押さえつけられてるせいで余計に谷間を露わにしている。

少女はゴクリと生唾をのんだ。


相手は、自分が男に見えたから剣を向けたわけじゃないんだ・・・・・・。

そう思ったら、恐怖で血の気が引いた。
額に冷や汗がうっすらと浮かぶ。

『ほー・・・こりゃまた、見事に見目のいい女だな。ま、好みじゃあないがな』
ニヤッと笑うと、剣を下ろした。

その動作を見て、自分を斬る気はないのだろうとは思ったが、一度根付いた恐怖は簡単には消えない。
金髪マッチョが近付いてくるたびに、少女の頭の中では鮫に襲われる映画の効果音が鳴り響いている。

恐れをなして身動きがとれない少女の目の前に立つ大男。
綺麗な金髪に、均整のとれた筋肉が威圧感を割り増ししている。


だが、その迫力満点の外見にあまり見合わないどこか寂しそうな瞳――
少なくとも、少女にはそう見えた。

『瞳の・・・色が左右で違うが、何故だ?』
頭上から異国語が降り注ぐ。
何を言っているのかわからないからここまで困っているのに、疑問を投げかけられても少女に理解できるわけがない。

「あの・・・何を言っているのか、さっぱりわからないんですが・・・」
口がきけないフリをする事もできたが、女だとバレた今そんな小細工をする気力も残っていなかった。
それに昨日の『悪そう三人組』とは違い、着ている服も布地からして上質に見える。


もしかしたら、助けになってくれるかも・・・・・・。

と甘い期待を胸に抱いた瞬間、団扇かと思うほど大きな手が少女の頭をガシっと掴んだ。

『あーあー、そういや前にもこんなことがあったなぁ。俺も、厄介事に好かれるようにできてんのか?眞王サマよ!』

頭に強い力が加わった。

音にならない音が聞こえる、耳鳴りのようなキーンと高い音。
痛みと不快な音で頭の中を占領され、少女は剣も恐れず猛然と食って掛かる。

「ちょっと、いきなり何するのよ!力試しなら私の頭じゃなくて、他のモノでやりなさいよ!!」
渾身の力で、自分の頭を掴んでいた両手を払う。
その姿に、男がまたニヤッと笑った。

「やっぱりな、また魂の入れ替えごっこか。お前さんも、アイツみたいに面倒に巻き込まれる運命みたいだな・・・・・・」
そう喋り終えた時、どこか哀しい目で見つめられ、少女の胸は思わず高鳴った。


 愛しい人でも思い出しているのかな、優しい瞳・・・・・・。
 って、あれ?言葉!私、この人の言ってる事がわかる!!


「ねえっ!私の言葉、通じてるの!?」
「ああ、通じてるぜ。お前さんにも、俺がなんて言ってるかもうわかるだろ?」

「わかる、わかるわ!どうしてさっきまでわからなかった言葉が、急にわかるようになったの!?」
息継ぎもせずにまくしたてる様子に、「まあ、落ち着けや」とたしなめられた。

「どんな状況でどうこの世界に来たのかはわからんが、お前さんの魂の持ち主が眞魔国の者であったことは確かだろうな。双黒のお嬢さんよ」

言葉はわかったが、意味がわからない。これはこれで辛いものだ。
「シンマコク?魂の持ち主ってどういう意味?双黒って・・・」

瞬間、背後から猛スピードで何かの生き物が駆けてくるのがわかった。

長い黒髪をなびかせ後ろを振り向くと、茶色い馬に跨って左手にこれまた切れ味よさそうな剣を握った男が一人。
逞しい腕、オレンジの髪、ブルーの瞳。

「オカマッチョさん!?」

思わず口から出てしまったあだ名。
もう、言葉は通じているのに。


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あきゅろす。
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