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Lily
雰囲気〜充〜
今日もみんなは俺の家に来たけど、よくわからないが、ゆうちゃんとチョウは勉強をしている。
どうやら、今やっている問題集を35ページまでを終わらせたいらしい。だけど、今はやっと13ページが終わったところ。
「できた」
「違う」
「えぇー…」
こんな調子で、チョウはゆうちゃんが間違えたら問答無用で『違う』と言って、正解するまで次の問題をやらせないから、中々進まない。まぁ、俺がやったら一生終わりそうにないけど。
「ゆうちゃん、まだ半分も残ってるよー?」
「うっせ」
それにしても、何故ゆうちゃんはこの前といい、勉強をしているのか?俺が知っているゆうちゃんは、勉強なんて全くしていなかったはずだ。
こんな変な記号がいっぱい使われていると、読むこともできない。これらは読めるのだろうか?
「そういえば義文は?」
正樹が聞いた。
「あぁ、なんか急用ができたとかで、来れないらしいぜ」

あれ?
あいついなかったんだ。

「あいつが急用?あの暇人が?」
「な。俺もビビった」

人のこと言えないくせに。
まぁ、俺もだけど。

そんな中、けいちゃんが言った言葉に、誰もが動きを止めた。
「あいつ彼女できたよ」

は!?

「えぇ!?」
裕貴が叫ぶ。
「マジ!?」
「いや、多分だけど。この前女と歩いてるの見た」
「妹じゃね?」
義文に彼女なんて、信じたくない。
「あいつ妹いないだろ」
「母親とか」
「馬鹿か。流石にわかるから」
「えぇー…。義文にー…?」

ありねぇ…。

「いや、だから多分だって」
「負けた…」
「人の話聞けよ」
「可愛かった?」
俺が落ち込んでいる時、遼ちゃんが聞いた。

あっ。
俺も気になった。

「中の下」

なんだ。

「ふーん。ならいいや」
遼ちゃんの気持ちがよくわかる。
「同じ高校かな?」
チョウが聞く。
「多分、制服違ったと思う」
けいちゃんが答える。
「へぇー。じゃあ、バイトとか?」
チョウがまた聞く。
「もしかしたら、ネットとかかもよ?」
けいちゃんが言う。
「最低だな、あいつ」
ゆうちゃんが言う。
「あははっ」
チョウが笑う。

……。
何?
このテンポ。

俺はこの3人の近くにいながら、このテンポに合っていなかった。なんとなく、空気が違う。

なんか…、悔しい…。

「チョーウ。勉強なんかしてないで、俺と遊ぼー」
「駄目。2人はテスト近いんだよ」
ゆうちゃんに止められるかと思ったら、けいちゃんに止められた。どうやら、テストは来週の水曜日かららしい。

俺テスト勉強なんてしたことないからなー。
ってか、テストの大事さがわからねぇし。

「それなのに遊び来て平気なの?俺達の学校のレベルなら別にいいけど、2人共一応進学校じゃん」
「『一応』ってなんだよ。普通に進学校だよ」
裕貴の言葉に、ゆうちゃんは反応した。はっきり言って、どうでもいいことに。
「いや、そこはどうでもいいだろ」
遼ちゃんも同じ気持ちだったらしい。やっぱり、どうでもいいと思った奴はいっぱいいたのだろう。

ってか、なんでゆうちゃん進学校なんか行ったんだろ?
勉強なんかしなかったくせに。

けいちゃんと裕貴が話していると、誰かの携帯が鳴った。
「あっ。あたしだ」

へぇー。
チョウこういう曲聴くんだ。
知らないけど。

「大樹さん?」
チョウが携帯の画面を見て言った。

‘大樹さん’…?
なんとなく、聞いたことがあるような…。

「……。冬夜さんってQueerのギタボしてる人だっけ?」

あー。
確か、前涼兄からそんな名前聞いたことあるかも。

「そうだよ」

たぶんだけど。

「あぁ、みっちゃんの従兄弟関係だっけ?」
俺は遼ちゃんに頷いた。
「あぁ、なるほどねー。でも、なんで大樹さんが?」

‘大樹’って名前も、涼兄の口から聞いたような、ないような…。

「‘大樹さん’ってもしかして涼兄のバンドのドラムかも」
「そうなの?」
「うーん…。多分だけど。前なんか聞いたことあるような、ないような」
「へぇー。ってか、聞けばいいんじゃん。今メールしてんだし」
そう言うと、チョウは指を動かした。
「冬夜さんって何歳かわかる?」
「多分今年19?涼兄のバンドのメンバーはみんな幼なじみらしいから」
「へぇー。じゃあ、大樹さんドラムかも」
「ってか、大樹さんって誰?」
けいちゃんが口を挟んだ。
せっかく俺がチョウと話しているのに口を挟まれるのは気に食わないが、はっきり言って、それは俺も気になっていた。
「兄の友達。よく遊びに来てたんさ」

ほぉー。
じゃぁ、涼兄とチョウの兄貴も友達なんかな?
いつか、聞いてみるか。

「なるほどねー…」
裕貴がそう言うと、また携帯が鳴った。
「あー。ドラムみたいだね」
「やっぱり。その大樹さんと冬夜さんがどうしたの?」
「あぁ、なんか冬夜さんが『もしよかったらまたライブ来て』って言ってくれたんだって。行きたいなー」

へぇー。
俺も一回は行ってみたいよなー。
涼兄連れてってくれないんだよなー。

「そんなによかったの?」
正樹が聞いた。
「良かった…。最高だった…」

ヤバッ。
なんか、超聴いてみたくなった。

「あたし、気付いたら涙流してたから…」

へぇー…。
チョウが涙ねぇ…。

「あたし、冬夜さんの声大好き」
チョウのその言葉を聞いて、みんなが黙り込む。きっと、みんないろいろ考えているのだろう。
すると、思いもよらない声がした。
「俺はチョウの声好きだよ」

!?
遼ちゃん!?
こんなこと言うキャラだったっけ?!

「あはは。ありがとう」
「俺も好きだよ」
今度は文弥が言った。

文弥も!?

「俺も。ってか、チョウの声は初めて会った時から格好良いと思った」
「俺も思った!」
けいちゃんの意見に、裕貴が同意する。
「ふーん。やっぱり、みんなもチョウの声好きだったんだ」
「何お前。『自分が最初に好きになりました』的な発言」
「いや、別にそんなつもり全くないし」
俺は正樹を睨んだ。

そんなつもりなくもないけど。

「なんか、うれしいかも。あたし声低いの結構気にしてたから」
「気にすることないよ。格好良いんだから」
ゆうちゃんが勉強しながら言った。

そうだ。
ゆうちゃんあと20ページくらい問題残ってんだ。

「ありがとう。でもさ、この声の低さは、声が高めの男性より低いよね」
「うん。まぁ。でも、いいんじゃね?似合ってるし。チョウが高いと逆に変。ってか、身長あるから低くなるのは仕方がないでしょ」
けいちゃんの言葉に、全員が頷く。
「でもあたし、女性の曲歌えないよ?」
「へぇー。じゃぁ、男性の歌ばっか?」
「うん」
裕貴の問いに、チョウは苦笑いをしながら答えた。
「聴いてみたいなぁー」
俺がそう言うと、チョウと正樹が顔を見合わせた。
「もしかして、この流れはあの時言ってたことに繋がるんじゃね?」
「繋がりそうだよね」
2人の会話に、誰もが疑問符を浮かべる。

『あの時』って何?

「みっちゃん、この流れで、次に言う言葉は?」

『この流れ』?
『次に言う言葉』?
『この流れ』…?
歌…?
聴く…?
歌を聴く…?
歌を歌う…?
カラオケ…?
あっ。
なるほど。

「わかった」
「わかった?」
チョウが聞き返す。
「うん」
俺はそう言って、息を大きく吸った。
「カラオケ行こうぜー!!」
「イエーイ!!」
俺の言葉に、チョウと正樹はハイタッチした。

あっ!
ずるっ!

他の奴等は状況が飲み込めないらしく、目を丸くしている。はっきり言って、俺もあの2人の話を理解していない。
「一体、何?」
ゆうちゃんが聞いてきた。
「前ちょうど駅で会った時に、みんなでカラオケ行くかって話したんだよ」
「その時、あたしがちょうどカラオケの帰りだったんだよね」
「なるほどね」
裕貴が納得した。
「まぁ、今までその話したこと忘れてたけど」
「あたしも」
「駄目じゃん」
遼ちゃんがつっこんだ。

最近遼ちゃんつっこみ役だな。
それにしても、カラオケかー…。

「よしっ!」
俺はそう言って、立ち上がった。
「彼女なんかできた義文抜きでカラオケ行くぞー!!」
「おぉー!!」
「あははっ!!」
俺が拳を挙げて叫ぶと、男共は一緒になって拳を挙げ、チョウは爆笑をしていた。
それにしても、なんかけいちゃんの雰囲気が変わったと思うのは、俺だけだろうか?


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あきゅろす。
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