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Lily
誕生日〜佑介〜
「藤澤!」
廊下で俺を呼び止めたのは、なんと珍しくも内海だった。
「何?」
こいつが俺に用事とは、普通に考えてありえない。そんな世間話をする仲でもない。
「お前知ってる?来週、チョウの誕生日だよ」
「…本当に?」
「嘘付いてどうすんだよ。本当。来週の木曜」

来週の木曜日…。

「何で教えてくれたの?」
「え、お前プレゼントあげないの?」
「いや、そうじゃなくて。…あげるけど」
「知りたいだろうなーって思って」
そう言う内海はニヤニヤしていた。

こいつ…。

「教えてくれてありがとう」
俺はそれだけ言って、教室に向かって歩き出した。後ろから、内海の声が聞こえる。
「いいえー。忘れるなよー」

忘れるわけがない。


「へぇー。来週の木曜日ねぇ」
「ゆうちゃん、何あげるの?」
「それが困ってる」
女子にプレゼントなんて、したことない。
「だから、何かアドバイスくれ」
「俺、プレゼントとかしたことないわ」
「え?」
「嘘でしょ?」
俺達は琉の言葉を疑った。
「何で嘘だと思うんだよ。本当だよ」
「琉ちゃんプレイボーイなのに、プレゼントはしたことないのかー」
「何だよ。悪いか」
「琉ちゃんもまだまだだね」
「うっせ。じゃあ、お前はあるのかよ」
「妹に!」
「帰れ」
「あー、酷い。お母さんにもプレゼントしましたー」
「もっと帰れ」
「家族でも一応女子じゃんかー!」
俺はこの2人のやり取りを、呆れて見ながら思った。

今回はこいつ等戦力にならねぇな。


彼女がいたけいちゃんに聞くことを一瞬考えたが、けいちゃんも深田さんのことを好きなことを忘れていた。大河さんに聞こうかとも思ったが、あの人は桁外れなプレゼントを言ってきそうだったのでやめた。
色々考えた挙げ句、姉貴に電話した。とっかえひっかえ彼氏を作っていた姉貴なら、プレゼントをいっぱい貰っていたはずだ。
「『高校の時のプレゼントで貰って嬉しかった物』?」
「そう」
「何あんた、好きな子いるの?」
「うるせぇな。別にいいだろ」
「彼女?」
「…違う」
「付き合ってないなら難しいなー。しかも、どうせお金ないんでしょ?」
この女は痛いところを突く。
「…御察しの通り」
「まぁ、何でもいいんじゃない?」
「結局投げやりかよ」
姉貴に聞いた俺が間違っていた。よく考えれば、この女が俺の悩みに真剣に答えてくれるとは思えない。
「アクセサリーはよしな。付き合ってないなら、重いから」
「…わかった」
「高校生だし、雑貨とかでいいと思うけどね。好みがあるだろうから、『せっかく貰ったけど、好みじゃないから使えない』って物より、好みじゃなくても気楽に使える物がいいんじゃない?毎日使えるような。極端に言えばシャーペンとかね」

なるほど。

「わかった。ありがとう」
「頑張ってー。あっ、お帰りなさい」
大河さんが帰ってきたのだろう。俺は電話を切った。

毎日使えるものか…。

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あきゅろす。
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