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Lily
屋上〜充〜
「遅くなってごめんなさい」
「大丈夫だよー」
やっとチョウが到着した。悔しいが、もちろんゆうちゃんと一緒に。
「でも、ゆうちゃんは遅刻だから罰金」
「なんでだよ」
ゆうちゃんはそう言って、俺の隣に座った。多分、チョウが俺の隣に座らないように考えての位置だろう。
「もう花火大会始まっちゃう?」
「うん、そろそろ出なきゃ始まるかも」
「じゃあ、行こう?」
「来たばっかじゃん。休まなくて平気?」
「私は全然平気!むしろ、始まっちゃうほうがヤダ!」
今日のチョウはどこか無邪気で可愛い。
「じゃあ、チョウがそう言うなら行くか」
遼ちゃんの言葉に、俺達は立ち上がった。


コンビニでお菓子やお酒を買ってから、俺達は文弥が見つけたビルの屋上に着いた。
「おー、貸し切りじゃん」
「穴場スポットだな」
障害が一つもなく空が見えるのに、ここは誰にも知られてないのか、人はいなかった。
「絶景ー!夜景すごい綺麗」
チョウが柵のほうに行き、街を見下ろしている。その姿を見ているだけで幸せになれた。

2人きりだったらなぁ…。

ちらりと他の奴等を見る。
裕貴はチョウと一緒に夜景を見ているが、他は全員座って買ったお菓子とかを取り出していた。

ムードってものがこいつらにはない!

「みっちゃんちがあそこらへんかなー」
チョウと裕貴の近くに行くと、会話が聞こえてきた。
「へー。裕貴君の家は?」
「んー、あそこらへん」
裕貴は漠然とした場所を指した。
「暗くて全然わからない」
「その四角い暗い一体が裕貴の家だよ」
俺はチョウの後ろから、手を伸ばして裕貴の敷地を指した。
「え、めっちゃ広いじゃん!」
「裕貴の家、華道家だから」
「そうなの!?」
「俺はセンスなくて何も作れないけどね」
そう言って裕貴は笑っているが、こいつの作品は俺の祖父が買って家に飾る程洗練されている。
「またまたー」
若干照れている感じの裕貴にイラッとした。
「あっ」
チョウが呟いたその時、花火が上がった。
「わー!」
「おー」
「始まったなー」
後ろでも色々話している。
そして、隣ではチョウが無邪気に目を輝かせながら、花火に魅入っていた。

可愛いな。

「おーい、乾杯しようぜー」
「いいねー」
遼ちゃんに呼ばれ、俺達もオッサンの輪に加わった。
「乾杯ーっ!」
俺達は缶を打ち付け合った。
「花火見ながらのビールは最高だなー」
「なー」
チョウのほうを見ると、圭ちゃんと何か楽しそうに話していた。

ムッ。

一々こんなことでイラついてる自分がガキみたいだが、そのくらいチョウのことが好きなのだから仕方がない。
もし、チョウと付き合えた時、自分はどうなるんだろうとか考えなくもない。でも、今からそんな想像してても仕方がないから、今はとりあえずチョウを手に入れることだけに集中しよう。
「チョウ、花火もっと近くで見よう!」
「うんっ」
チョウの手を掴むと、何の抵抗もなしにチョウは立ち上がって俺に付いて来てくれた。
今はそれだけで幸せなんだ。


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あきゅろす。
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