Lily 恋人歴〜琉〜 「高校にも入って彼氏いたことないって、やっぱり変なのかなぁ?」 夏休みも終わり、新学期初日に深田さんが、いきなり変なことを言い出した。だいぶ、彼女に似つかわしくない発言だと思う。 「いきなりどうしたの?」 「いや、高校入ったらさ、みんな彼氏いたことあるって聞くんだよね」 かなりどうでもいいと思ってしまった俺は、間違っているだろうか? 「そうなんだ」 ……。 「え、内海は?」 「内海はいたことあるの?」 思わず、佑介とセリフが被ってしまった。 「今日子ねぇ、あの子お兄さんの知り合いとか、結構付き合ったらしいよ」 「あーね…」 類は友を呼ぶってか。 「でも、佑介いたことないでしょ?」 「そうなの?意外」 同族意識か、深田さんの目が少し輝く。 「あぁ、まぁ…」 「あれ、でも、いつかのあの女の人…」 深田さんが思い出したように言った。 あぁ、噂のあの人。 そんな人もいたねぇ。 「いや、あれは本気で彼女じゃないって」 ちょっと慌てている佑介が面白い。 「ふーん。そうなんだ」 「本当だから。ってか、琉はいたよな」 そう言って、こっちを見てくる佑介の目がムカつく。 「平塚君はいそうだよね」 「好青年だもんな」 そう言う佑介の口はニヤけている。 うっぜー。 「まぁな」 「あはは。自分で言っちゃった」 「だって事実だから」 「馬鹿か。飲み物買って来る。なんか欲しいのある?」 「やった、奢り?」 本人は意識してないのだろうが、佑介が立ち上がったことにより、上目遣いで深田さんが聞いた。 あーぁ。 そんな顔で聞かれたら断れないでしょ。 「…いいよ」 ほーら。 「じゃあね、私ピーチティー」 「俺100%グレープ」 「いや、お前には奢らねぇよ」 「うっそー。ケチってるなぁ。80円くらいいいじゃん」 「うっせ。お前はダメ」 「あはは」 佑介が手を出してきたので渋々お金を渡すと、佑介は飲み物を買いに行った。 「藤澤君、かなり明るくなったよね」 「まぁね」 あなたのおかげだと思うよ。 「昔はもっと口数少なかったよね」 「確かに。深田さんのおかげじゃない?」 「私?私何もしてないよ?」 「何もしてなくても、あいつは話してもらえるだけで嬉しいんだよ」 「ふーん。やっぱり怖がられてきたからねぇ」 「ん?う、うん…?まぁ…、多分…」 本当は違うんだけどなぁ。 まぁ、いっか。 [次へ#] [戻る] |