運命ノ靴音
3
「ただいま。」
「ニャァ。」
卒業式後、群がる女子にボタンだけでなく、校章や名札まで獲られボロボロになった俺が家へ帰りつくと、出迎えたのは飼い猫の"ネネコ"だった。
家族は皆、これ程の美猫は他にいないと溺愛するが、俺にその可愛いさが伝わった試しはない。
元来動物が好きではない為、当然だろう。
「お帰り!ねぇ、お兄ちゃん。」
リビングに入り上着を脱いでいると、真新しいパンプスを履いて嬉しそうにしている妹に呼ばれ、顔をあげる。
何か用があるのかと待って見るが、ただこちらを見るだけで、何の行動も起こさない。
…?
怪訝な顔をしている俺に、痺れをきらした妹が口を開く。
ちなみにこれは、昔から口が悪い。
「似合ってるね、とか言わないのっ!?お兄ちゃんヤリチンなんでしょ!少しは気の聞いたこと言わなきゃやらせてもらえなくなっちゃうよ!ハゲ!」
どんな言い種だ。という言葉は、飲み込まざる終えなかった。
この言葉は、俺の反論を阻止するにあたって、多大な影響力を持っていたりする。
同じ学校に兄妹がいるというのは、時に酷く不都合だ。
「女の子たちに、きちんと挨拶したのよね?誉。」
後ろから冷たい空気を伴い聞こえてきた声は、主もまた、地を這うほどの冷たさを滲ませていた。
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