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運命ノ靴音
出会いは、突然に


そもそも、俺の風紀紊乱が母さんの耳に入ったのは中2の春だった。
きっかけは妹…ではなく、

中学に入って唯一出来た、―友人だった。





――――――……


中2の春休み、俺は学校に呼び出されていた。

去年、学年一位の成績を収めたらしい俺は、始業式の挨拶には打ち合わせが必要だという担任と共に、ジーパンにVネックセーターというラフな格好で、体育館前の階段に腰掛けていた。

「ごめんね、黒谷くん。折角来てもらったのにこんなところで待たせちゃって…。鍵を持った先生がもう少しで到着するからね」

まだ二十代後半に差し掛かったばかりといった出で立ちの、可愛らしい担任が申し訳なさそうに俯き、チラチラと上目遣いで俺の様子を伺ってくる。
特に気にするでもなく、ぼんやり虚を見ていた俺に突然、担任は切り出した。

「あの…、黒谷くんは彼女とかいるのかな?あっあの、お説教とかじゃないんだけどっ…」


何を唐突に。
まさかお前まで、スキなんて言い出すんじゃないだろうな。

「他の先生方も心配されててね、黒谷くん、不特定多数の女の子たちと…そういう…あの…、」

なんだ、そういう役回りか。
まだまだ新米の域を出ないこんな教師に 、"問題児の更正" なんて課題は、荷が重すぎるだろう。

「その、やっぱり…あの、中学生には中学生らしい…交際っていうのが、あって…えっと…」

よく見れば担任の"目"は、口調とは裏腹に、熱い使命感に燃えているようだ。
この話、簡単に終わりそうにない。





――――――……


「だから、女の子たちとはちゃんと…あの、別れた方が…、あっ!それに、
…………………
………………………
…………………………。」

暫く聞いていたものの、長い。とにかく長い。

―面倒だな。

ふと思い立ち俺は、この担任をからかってみることにした。
俺の心配は、先程杞憂に終わっているため、最悪冗談だと笑ってやればなんとでもなるだろう。

「…先生とならいいのか?」

「えっ?」

「先生となら、中学生らしからぬ交際をしてもいいのかって聞いたんだ。」

そっちを見ずに言い放てば、担任が固まった。

そういえばコイツ、なんて名前だったか。

今さらながら、に隣で固まっている人物の名前を思い出そうと奮闘しながら、次の反応を待つ。

「…それ、ほんき…?あたし、ずっと、見て…」

あー平山、だったな。って何?

結局、最初に危惧した通りの結末となったわけだが、今となっては明らかに過失はこちら側にあるだろう。
先程見た燃える目は、"使命感に"ではなく、"嫉妬に"、燃えていたようだ。

「あ、あの…誉って呼んでも…いい?」

平山は、もう俺の話など聞くつもりはないらしい。
俺にしても、相手が一人増えたからといって何が変わるでもない。
この際その"相手"が教師である、と言う事実は黙認する他ないだろう。
大体、俺はここまで来て誘いを断るなんて手間をかけるほどの行動力は、1gも持ち合わせてはいないのだ。

面倒な事になりそうだが、放っておくしかないと、激しく痛みを訴える頭を抱えたくなっていたその時、


「あの、」

突然頭上から、聞き馴れない声が下りて来た。
驚いて見上げればそこには、





―天使がいた。





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あきゅろす。
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