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運命ノ靴音
5


午後からはクラス発表や委員の選出がある。
俺達は校舎へと向かっていた。

途中何度か桐生様!や流様!と男として頷けないサイズの男が騒いでいたが全てなかった事にしてその場を過ぎた。

「うわーすごい人」

入ってすぐの吹き抜けになった広間にクラスが張り出され人集りが出来ていた。
とても近寄りたくはなかったがコンタクトを入れても目が良い方でない俺は仕方なく数歩前へ進み出た。

「桐生くん、僕らは間違いなく1-Sだから見なくていいよ」

…それを早く言ってくれ。
男に頬を染められる経験はいい加減遠慮したいんだ。





――――――……

教室に着くとホワイトボードに席順が張り出されているらしかった。

「こうゆうのワクワクしない?流のも見て来てあげる!」

「しねぇ。サンキュな」

珍しくハイテンションな柚月はスキップでもしそうな様子で前へ進み出たかと思うとあっとゆう間に踵を反した。

「僕が20番、桐生くんが6番で廊下側の最後尾、流が僕の隣の26番だって。」

「へ…桐生廊下側かよ。やばくねぇ?」

もう自分が世にゆう美形に属される事は理解した。
だが、この様な事態に遭遇する理由までは理解出来ていない。

アレ、と流が指差す先には俺達の後を着いてきていたのであろう小さい男が廊下を埋め尽くしていた。
俺を登校拒否にでもしたいのだろうか。

「桐生くん、そこのドア開けて"解散"って言って」

妙にキラキラしたものを背負っているように見える柚月の指示に従うのはどうか、とも思ったがこのまま席に着くよりはいいのかもしれない。

ドアに近づき、手を掻け一気に開け放つ。
目の前の小さいのが息を呑み余波が広がるように生徒達が固まっていく。
その反応と視線に早くも後悔の念に襲われるも後に引く事は出来ない。


「…解散。」





「は……、……はいぃっ!

キャーーーーー!!!!」


彼らは絶叫しながら蜘蛛の子を散らす様に去っていった。
偉く効力を持った言葉だったらしい。
柚月はこういう面で頼りになる存在の様だ。

障害も何も無くなったところで席に着けば嫌でも視界に入る柚月が机に突っ伏し拳を握り締めていた。









「柚月、どしたんだよ…。」

「"クール美形がチワワを手懐ける図" 一度見たかったんだ!!これに萌えなかったら腐ってるとは言えないでしょ!!」

「言われてぇのかよ……。」






それからすぐに入って来た担任は教師になるべくしてなったと称賛を贈りたくなる程に教師らしい人物だった。

「担任の三枝です。三年間頑張りましょう。出席番号4番の、えー…今池君、これを見ながら委員を決めて下さい」

俺は一人胸を撫で下ろした。
律儀にも自己紹介なんて物を始められては堪らなかった。





――――――……

「では、最後に委員長を決めたいと思います」

委員を決めると言ってもほんの5つ程しかそれはなく残り一つとなるのにそう時間は掛からなかった。

「委員長に立候補したい人はいませんか?」

全く同じ質問が五度繰り返されるのだから次の言葉も簡単に予想出来る。
それにしても既に決まったメンバーが最近判別可能になった俗にいう美形なのは何故なのだろう。

「…では誰か推薦したい人はいませんか?」

「き、きき桐生く、くんがいいとお、思います!!」

「僕も!」


二度目に聞こえた声には聞き覚えがある。
柚月、お前は味方なのか敵なのか。


「では、桐生くんで決定にします。異義のある人はいますか?」


こうして俺は一年間"クラス委員長"という目立つ委員に就いてしまい幸か不幸か、"副委員長"は流だった。




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