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運命ノ靴音
6

このタイミングで着信をよこしたのは、柚月だった。
耳を劈くような叫び声に俺の指は独りでに電源ボタンを探った。

着信を確認した俺にとって、実際のところ柚月は予想に反した相手であった。
“あの”柚月がまさか、俺が石動と共にいると知ってわざわざ、その時間を中断させる様な真似をするとは思い難かったからだった。
しかしまぁ自分の道を突き進むことに措いては誰にも負けない彼を、俺の想定する範囲に治めようとするのは間違いだろう。

「桐生くん!切らないで!」

こういった時にはしっかりと空気をよんでくるらしい。

「発表があるの忘れてるでしょ!生徒会役員の!早く帰って来て!!ここからが本番なんだから!あ、?でも、そっか…うーん…」


何やら悩みだした柚月は、どうしたって一害あって一利無し、であることは明白で今度こそ迷い無く、俺はその通話を終了させた。

通話を終わらせ隣をみやる。
石動は、カチカチとメールに返信を書いているらしかった。



「もしかして、副会長って誉か?」

石動は一度手を止め、突然俺にそう言った。
確かにその通りでありはするが、何故その事を彼が知っているのだろう。

チラリとこちらに視線を投げた石動は、クスクス笑い、やっぱりそうなんだなと言う。

「実は、こないだ千景にそういう話を聞いてさ…、あ、千景ってゆうのは、生徒会で会計をしてる辻 千景の事なんだけど…」

一瞬、固まる思考回路を無理矢理動かし、あぁ繋がったと項垂れる。
やはり会計の発言に意味はあったらしい。

深く考えずとも、気の重くなる話だ。

石動の安全を確保し、それからゆっくりと2人の関係を進展させる事を目標に掲げていた俺にとって、これは大きな誤算だ。

「あ、でもはっきり聞いたわけじゃないんだぞ?たまたま誉の話が出てさ。あれ?なんで役員の話になったんだっけ?…まぁ、いいや。なんだかその時の千景の様子がおかしかったから、もしかしてって思ってさ」

石動の口調や様子から、2人の親密さが窺える。
石動程の器量なら、当然想いを寄せる男の一人や二人、いて当然ではあるのだが、この相手はまずくないか。
これでは悠長に構える余裕はなさそうだ。


さて、どうしたものか。


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