おお振り 終わりと始まりの季節(阿水) 「…春って切ない」 あと眠い。 言って、水谷はこてんと俺の肩に頭を預けてきた。 ふわりと左半身の熱が上がる。 「……なんかあったのか」 「んーん」 (一応)訊いてやっても、水谷は変わらず俺に寄りかかったまま、気だるげに応えた。 なんか、悪いもんでも食ったのか…? 「水谷」 「んぅー」 手を伸ばして、ふわふわと四方八方に跳ねたやわらかな髪を撫でてやると、水谷は気持ちよさそうに擦り寄ってきた。 そんな仕草に密かに鼓動を速めながら、決して顔には出さないように。 「…、」 穏やかな昼下がり、少し薄着でも良いくらいの暖かさだ。 腹ごしらえをしたあとの心地好い午後。 (五限目は…理科だったか、) ぽかぽかと眠気を誘う春の陽と、隣の体温に、サボってしまおうかと考えた。 哀愁を漂わせた姫様を、独り占めしながら眠るのも悪くない。 「……阿部ぇ」 「なに、」 「好きだよー」 「知ってる」 返せばクスクスと笑う声が聞こえて、俺も可笑しくなって笑った。 「春って終わりと始まりの季節だよね」 -------------------- 屋上あたりでふたりきりだと思われます^p^ [*前へ] [戻る] |