君僕。
禁断の果実(悠→祐)
パシッ、と叩かれた頬にさほど痛みはなくて、ただ考えていたのはあの子のこと。
泣き叫ぶ目の前の彼女に罪はなかった。ただオレがあの子のことを忘れられないだけであって、そう、自分に好意を寄せてくれている彼女に罪はない。
いっそのこと彼女に好きだと、そう言えたら良かったのに。
「……またフラれたの」
「………」
普段から抑揚の無い声が、少しの呆れを含んでオレに掛けられる。掛けられた声は問いではなく確信、だった。
「今回は長く持ったほうじゃない?…少なくとも前の子よりは」
「……黙ってよ、」
「…なに。怒ってるの?」
言葉に棘があることは、自分でも解っている。
ただもやもやと、胸の内に渦巻く何かと、どうしようもない焦燥感と。
(…泣いてしまいたい)
なりふり構わず泣き叫んで、好きだと言ってしまいたい。
けれど小心で臆病なオレの、誰が作ったか判らない“常識的考え”と、“世間体”がそれを邪魔する。
世間体なんて、気にするような歳では、ないとは思うけど。
けれど、人間はイレギュラーなものをそう易々と受け入れようとはしないから。好きだと叫んでしまって、それで、仮に結ばれたとしても。
(…バレたらどうする?後ろ指差されて過ごすのか…、)
白い目で見られて、指を指されて。この子にそんな事、させて堪るか。
「悠太?」
「っ、」
随分と、ボーっとしていたらしい。
近くまで近づいた祐希に気づかなかった。
ハッとした時にはもう遅くて、触れそうなほど近い、ずっと触れたかった唇に、堪らず口付けていた――。
禁断の林檎を食べた夜
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優しい悠太も好きだけど、こういうちょっと酷い男な悠太も好きv
もしかしたら、続く、かも
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