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堕ちた月の音
005

風になれ




紗羅と一緒に隊舎の食堂にいった、その次の日。



…つーかこの夢はいつ覚めんだ。

いくらなんでも長すぎだろ。



「やぁだー!!さらもおにーちゃんについてくーっ」



いやいやと首をふる紗羅に、俺も首をふる。



「今日はだめだ」

「どぉしてーっ」



涙目の紗羅がこっちを見上げてきたけど、死ぬ気で心を鬼にした。



昨日あんなことがあって、隊のやつらが黙ってるわけがない。


いや、それどころか、昨日一日でありもしないおびれまでついた紗羅の話が流れ回ってるに違いない。


今日は、何かと理由をつけて隊首室に来るやつらが絶えないだろう。


物珍しそうに、紗羅を見に。


それだけは絶対阻止だ。


俺の紗羅を、みすみす他の奴らに見せる気はさらさらねぇ。



「むーぅ…どーしてぇ」



うりゅ…とさらに涙を滲ませた紗羅に若干うろたえながらも、駄目だと首を降り続ける。



「今日は忙しい。留守番してろ」

「やぁだのーっ」

「紗羅」

「さら、おにぃちゃんといっしょにいたいー」

「…」

「おにぃちゃぁん」



足に縋り付かれて、一瞬鼓動が停止する。

普段の紗羅なら絶対に言わないセリフに体温が上昇した。



「…紗羅」

「ぬー」

「…分かったから。早くしろ、行くぞ」

「んきゃ!!いくーっ」



ハァとため息をついて抱き上げる。

小さな背中に垂らした(今日は結ばなかった)髪が頬をくすぐった。



「落ちんなよ。しっかり掴まってろ」

「ぬ?」



紗羅と攻防戦をしていたせいで、勤務時間まではあとわずか。

普通に歩いてたんじゃ間に合わない。



っつーことで、こういう時に便利なのが瞬歩。



「わきゃー!!はやいはやいーっ」



ぎゅっと首にしがみつく紗羅を落とさないように注意しながら、隊舎までひとっ走りした。








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