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堕ちた月の音
004

卵焼きにじゃれる




膝の上にのせた小さな銀髪。

普通ならできないこの姿勢に(紗羅が極端に嫌がる)夢も悪くないと思った。



「た、ま、ごー!!」



目の前に運ばれてきた卵焼きにキラキラと目が輝く。

放っておいたら掴みかかりそうな勢いに、あわててストップをかけた。



「紗羅」

「たまごっ」

「いただきますはどうした」

「たまごっ」

「言えないやつにはやらねぇぞ」

「いたーっきますー!!」

「よし、食え」



用意してもらったフォークに卵焼きを突き刺して口に頬張る紗羅に、俺もみそ汁をすする。



「おにーちゃ!!」

「なんだ」

「あーげーる」



ハイ、と向けられたフォーク。

その先端には卵焼き。



「…ありがとな」



パク、と口に含むと辺りにどよめきが起きた。


「あ、あの日番谷隊長が…」

「公衆の面前でお戯れに」

「しかもあんなに小さな妹さんと」

「明日は雷かもしれねぇ」

「私、写真撮っておきたい」



…おいおい。

最後の写真撮っておきたいってなんだ。

写真撮っておきたいって。

誰だよ言ったの。



「はい隊長〜こっちに視線下さぁい」

「………松本」

「ここで経費を稼がなくてどうするんですか!!今が稼ぎ時ですよっ」

「とか言ってる間にちゃっかり撮ってるんじゃねぇえぇぇ!!!」



パシャ パシャ

浴びせられるフラッシュに怒鳴りつけると、膝の上にのった紗羅が一言。



「おにぃちゃん。怒っちゃ、め」



ぷくっと頬を膨らませて、あの大きな瞳で見上げられ。



「…、……あぁ」



情けないことに引き下がるしかなかった。



「紗羅〜あんたもこっち向いてちょうだい」

「ぬ。らんちゃん、イエー」

「そうよそうよ。ほら隊長も紗羅を見習ってピースくらいして下さい」

「……」



どっかの馬鹿副隊長のせいで、食堂はいつの間にか大撮影会になっていた。








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あきゅろす。
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