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堕ちた月の音
02

月の愛し子




長い銀の髪。

大きな金の瞳。

例えるならその色彩は、季節によって色をかえる月…のような。



「…おい」

「あ、こんばんは」



くるりと振り向いたそいつはにこっと笑って手をふった。



「今日も会えましたね」

「…そうだな」



…“会えた”んじゃなくて“会いにきた”んだよ、馬鹿野郎。

そう心のなかで呟いて一歩近づいた。



「日番谷さんも夜空が好きなんですか?」

「…夜空?」

「寒いなかこんな所までくる理由なんてそれくらいしかないかなって思ったんですけど…、違いました?」



きょとんと首を傾げた弾みで、サラリと銀髪が揺れる。

その瞬間にふと思った。

夏は金に、冬は銀に輝く夜空の女王に例えるには、こいつはあまりにも可愛らしすぎる…と。



こいつはどっちかというと、月というより星。

キラキラ輝いて星座をつくる。

月はもっと冷たくて哀しくて…慈悲のカケラもない、そんなもの。

こいつには似合わない。



「…夜空は嫌いじゃないぜ。けど」



月は嫌いだ。

そう言いかけて、やめた。



…今さら過去をほじくり返しても、なんにもならない。

ただ虚しいだけだろ。

そう、虚しいだけ。

そんなことをしたら、あの頃のやるせない気持ちに囚われて、俺はまたおかしくなってしまう。



「けど、なんです?」

「…いや。なんでもねぇ」

「? そうですか?? ならいいですけど」



今日はもう歌わないのか、紗羅は凛とした表情で空を見上げた。



「…月って」



北風に、二人の銀髪が揺れる。



「すごく、自分勝手だと思いませんか」



その横顔を見た時、俺は直感的に悟った。

こいつも俺と同じ疵(キズ)を抱えてる、と。


銀に輝く月をじっと見つめるその瞳が一瞬揺らいで、ふっと笑った。



「どうしてって聞かれると、困っちゃうんですけど」


なんとなくそう思うんです。

そう微笑んだ横顔はやけに儚げで、思わず手をのばしかけた。


…何してんだ俺は。

昨日会ったばかりの奴に、無意識に触れようとするなんて。

しっかりしろ。



(=^ω^=)更新中(=^ω^=)



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