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受け止めるよ 何度でも


釣りをしているルフィとウソップに話しかけている。
チョッパーを膝に乗せて本を読んでいる。
ゾロとサンジ君が喧嘩している姿をニコニコしながら眺めている。
何かを作っているフランキーの作業を横でみている。
ブルックの弾くピアノに耳を傾けて、あいつ自身を観察している。



ただ普通の事をしているだけなのに。
自分以外の誰かを相手にしているってだけで、あたしの心は嫉妬心が渦巻く。


あたし以外を見ないで。
あたし以外に触れないで。
あたし以外に話しかけないで。

あたし以外にその笑顔を見せないで。


止まらない独占欲があたしを狂わせる。



「ナミ?どうしたの?」
「別に」

溢れる嫉妬が止まらなくて、本人にもきつく当たってしまう。
お願い、今のあたしに話しかけないでよ。



「じゃあ、何故そんなに怒っているの?」
「怒ってないってばっ、ほっといてよ!」

「待ってナミ…!」


大好きな彼女の声ですら今は聞きたくなくて、一方的に怒鳴りつけてその場を走り去る。
後ろで声が聞こえたけど無視した。




女部屋に戻るとそのままベッドに倒れこんだ。


なんであんな事言っちゃったんだろう…。
はぁぁと深いため息をつく。


頭ではわかっていても、どうしても気持ちが付いていかなくて。
いらついて、言いたくもない言葉をつい口に出してしまう。

我儘言って、つまらない意地張って。
ロビンは何も悪くないのに。


そう、悪いのはあたし。




ちくり、ちくりと痛む胸。

一つ。
二つ。
三つ。



大好きなロビンを傷つけてしまった。
やっぱり怒ってるよね。
嫌われちゃったらどうしよう…。

そんな事ばかりがぐるぐる回る。

今更自己嫌悪をするあたしは本当に馬鹿だと思う。



ギィィとドアの開く音が聞こえた。
むくっと起き上がり、ドアの方向を向く。


「ここにいたのね」
「ろび、ん…」

開けた主はロビンだった。

一番会いたくて、一番会いたくなかった人。

彼女が静かにドアを閉めて私の横に座った。
あたしは気まずいのと、顔を見られたくなくて俯いていた。


「ナミ。私、何か貴女を怒らせるような事をしたかしら?」
「………」
「何かしてしまったなら謝るから、お願い何か言って…?」


ほんの少しだけ顔を上げて、ロビンの顔を窺う。
今にも泣きそうな、辛そうな表情を見てまたちくりと胸が痛んだ。


そんな顔をさせたいわけじゃないのに…。



「…がうの」
「え?」

「ちがうの…ロビンが誰かと話してたり、してるのがすごく嫌で…当たり前な事なのに、嫉妬しちゃって…ロビンを傷つけて…」

「ナミ…」
「ごめ…ごめ、んね…ごめんねろびっ…」

自分の気持ちを話しているうちに、ボロボロ涙が溢れてきて。
ちゃんと伝えたいのに伝えられなくて。
頭の中はぐちゃぐちゃだけど、必死に思いをぶつけた。


ロビンの両腕があたしの体を包み込み、そっと抱き寄せた。
そして、優しく頭を撫でられる。
甘い花の匂いと柔らかい感触でまた涙が零れた。


「ありがとう」
「っ…ろびん…?」
「すごく、すごく嬉しいわ」
「なん、で?」
「だって、嫉妬してくれるほど、私の事を好きなのでしょう?」


顔を上げるとにっこりと微笑むロビン。
長く綺麗な指先でそっとあたしの涙を拭ってくれた。


きゅうと胸が締め付けられる。
でもそれは全然苦しくなくて。
むしろとても愛おしい。

堪らなく愛おしいの。


「…っ、うん、大好き…大好きだよっロビン…!」
「ふふ、私も大好きよ」


あぁやっぱり、この人は本当にすごい。


今日みたいなあたしの嫉妬も。
いつもの理不尽な我儘も。
馬鹿みたいなつまらない意地も。


いつも受け止めてくれる。
何度も何度も。

全て包み込んでくれる。


それが逆に申し訳なくもあるけれど、あたしはロビンじゃないと駄目なんだって再確認させられる。

なんだかんだでこういう関係があっているのかもしれない。

あたしは何もしてあげられないから。


だからあたしは、お礼の代わりにとびきりのキスをあげるの。
いつもありがとうって。


そしたら顔を赤く染めて、またぎゅって抱きしめてくれた。






**********
嫉妬するナミちゃんは本当に可愛いと思います。
姉さんも嫉妬はしてるんですけど、表に出さなそう。
あえてモロ出しもいいですが。

いつの間にかお題あと一つだ!

2010.06.19




あきゅろす。
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