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優しい嘘

愛してた…柔らかなその声も。
愛してた…オレンジ色の髪も。
愛してた…淡い栗色の瞳も。





愛してる…今でも、まだ愛しているの。




雨が降りしきる中、海を渡る列車で一人、愛しい彼女の事を思い出して
いた。

目を閉じると頭に浮かぶのは、いつものように笑う貴女。
できることならば、あの日の様に抱きしめたくて。

無意識に伸ばした手をぎゅっと握りしめ膝に戻した。
輝いていたあの時を振り向いても、もう貴女はいないのに。


“ロビン”


私の中の彼女が私を呼ぶ。


「っ………」



焼けた傷口がまだ痛くて。


“ロビン”


貴女の優しい声が今もこだまする。



“好きだよ、ロビン”




「っ…くっ…ぅ……」


目頭が熱くなり、大粒の涙が頬を伝って流れ落ちた。


少しだけ。
今は少しだけ泣かせて。


ごめんなさい。








愛してた…誰より涙もろくて。
愛してた…イタズラに拗ねたりして。
愛してた…素直じゃないヤキモチ妬き。


愛してる…こんなにも愛してるのに。



ウォーターセブンに着く、ほんの少し前の事。


「なんでいつもそうやって!」
「だって、航海士さんがあまりにも可愛いんだもの」
「うー…ロビンのばか、大嫌い!」

そう言いながら私に抱きつく彼女。
ふわりと香る蜜柑の匂いと、柔らかな温もりが愛おしかった。



「ふふっ、言ってる事とやってる事が全然違うわ」
「いーのよ!」

そう言って少しだけ乱暴にキスされた。

彼女と交わした時の感触は、今でもちゃんと覚えている。



もちろんその時のキスが初めてではない。

朝目覚めた時も。
喧嘩をして仲直りする時も。
愛を確かめ合った時も。


どんな時だっていつも優しさと、口付けを私にくれた。



なのに私は…。


ただ、我侭に一人貴女を置き去りにした。



貴女と最後に話したあの夜。
もう一度だけ会いたい人がいると言って、貴女の元へ行った。

「ロ、ビン…!今までどこに…」

私を見る彼女の瞳は、赤くなっていた。
少し頬も腫れている。

きっと今まで泣いていたのだろう。
それを見て嬉しいと思ってしまったと言ったら、彼女はどん
な反応を見せるだろうか。


「言ったハズよ。私はもう、貴女達の所へは戻らないわ」
「それなら、どうして…」
「…もう一度だけ、貴女に会いたかった」
「っ…な…んで…なんで…」

なんでいなくなるの。
どうして戻ってこないの。
なんで。
どうして。

必死で訴えかける彼女の問いに私は何も答えなかった。
否、答えられなかった。





「ごめんなさい」


私はただ、謝ることしかできなくて。


「嫌い…大嫌いっ…!」


彼女は涙を堪えながらそう言って、震えて抱きついた。



彼女の言葉は嘘とわかっていた。
わかっていたのに。


「そう。ならよかった」
「え…」
「もう二度と会わないのだから、嫌ってくれた方がいい」
「っ………」



ズルイ私は気づかないフリをした。


「ごめんなさい」


貴女を泣かせてしまって。
傍にいられなくて。
抱きしめられなくて。




そっと彼女の体を離して「さよなら」と一言告げ、背を向けて歩き出す。







ーーーーー




最後に私の名前を呼んだ声が、いつまでも耳に残っていた。


貴女が付いた最後の嘘。
貴女が流した最後の涙。

そして、私がついた最後の嘘。



終わりを告げた夜明けの前、窓の外は冷たい雨の中。

私が願うのはただ一つ。



仲間と彼女が無事でありますようにと。








「ナミ…」


焼けた傷口がまだ痛くて。





「ナミ…ナミ…っ」





これで。
もう最後の涙を流すから。






「す、き……」




今日だけ泣かせて。



さよなら。
誰よりも愛した人。




**********
久々の更新でございます!
この曲は私の中で多分一番のロビナミソングです。

ずっとこの曲で書きたくて、何度も書き直してようやく完成しました。
謎の感動(笑)

相変わらず無理やり感はありますが;
そして色々矛盾してる所がありますが…目を瞑って頂けると嬉しいです←

2010.11.29



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