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 あっさり素直に答えられ過ぎて、妙に気が抜けた。
 こちらの怒りなど欠片も通じていないらしい。

「……ーク」
「うん?」
「シーク。……コードは無い」

 荒んだ今日、政府管理用のコードネームを持たない未登録の子供は多い。
 唇を咬んでリィから目を逸らす。

「ふーん。シークね、シーク」

 弾んだ声でヒトの名前を繰り返す男。蔑みではなく純粋にコードなど気にもとめていない。言い淀んだ自分がバカらしく感じるほどに。

「よろしくね、シーク」

 頬に触れた手に驚いて顔を上げると、ちゅっと3度目のキス。

「っ!」

 ヒトの頭をクシャクシャとかき混ぜたリィは、扉の向こうへ消えていく。
 飄々と、子どものように気ままな行動。
 大怪我を負わされたはずなのに、なぜか心の底から憎めない。
 ――あの目は怖いけれど。
 ぼんやり座っていたら、肩の痛みが蘇った。襟から服の中を覗くと、白いガーゼにうっすら血が滲んでいる。

「あのバカのせいで少し開いたかな……」

 いつの間にか新しいガーゼを持ったルキオが上からのぞき込んでいた。



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あきゅろす。
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