6 あっさり素直に答えられ過ぎて、妙に気が抜けた。 こちらの怒りなど欠片も通じていないらしい。 「……ーク」 「うん?」 「シーク。……コードは無い」 荒んだ今日、政府管理用のコードネームを持たない未登録の子供は多い。 唇を咬んでリィから目を逸らす。 「ふーん。シークね、シーク」 弾んだ声でヒトの名前を繰り返す男。蔑みではなく純粋にコードなど気にもとめていない。言い淀んだ自分がバカらしく感じるほどに。 「よろしくね、シーク」 頬に触れた手に驚いて顔を上げると、ちゅっと3度目のキス。 「っ!」 ヒトの頭をクシャクシャとかき混ぜたリィは、扉の向こうへ消えていく。 飄々と、子どものように気ままな行動。 大怪我を負わされたはずなのに、なぜか心の底から憎めない。 ――あの目は怖いけれど。 ぼんやり座っていたら、肩の痛みが蘇った。襟から服の中を覗くと、白いガーゼにうっすら血が滲んでいる。 「あのバカのせいで少し開いたかな……」 いつの間にか新しいガーゼを持ったルキオが上からのぞき込んでいた。 [前へ][次へ] [戻る] |