第1回拍手 『君』 珍しくリィがうちに居る。 しかも。 昼間から、自室じゃなくリビングで寝てる。 いつものごとく黒い服を着ているせいで、黒い革のソファに同化して見えた。 猫のように丸まっているところを見ると、少し寒いのかもしれない。 ブランケットを手に近づいてみる。 整った顔は半分髪に隠れていて。 割と長いまつげが呼吸に合わせて小さく揺れていた。 赤い唇がなかったら、人形のように見えただろう。 「リィ……」 ブランケットを掛けた後、脇に座ってそっと呼んでみた。 反応はない。 眠っていると分かっていても、なんだか寂しくて。 「リィ」 「なーに?」 「あ…ごめ……」 起きないだろうともう一度呼んだら、黒い瞳がこっちを見ていた。 顔が赤くなるのを見られたくなくて立ち上がったのに、容易く抱き寄せられて。 優しいキスが。 「寂しがり屋だね」 「う……」 きっとこの先もかなわないのだ。 この男には――。 終わり [次へ] [戻る] |