10 きまぐれに拾ってきた訳ではないらしい。 実は意外とまともなのかもしれない。 自分に必要なものが何なのかしっかり分かっている。 ふとそう考えて、失礼な言い方だと打ち消した。 何を考えているのか分からないなんて、そんな風に深く勘繰る必要などない。 他人が思うよりずっとシンプルに、真っ直ぐに、この男は生きているのだろう。 ついさっき飲み込んだ言葉も通じないはずがない。 「行ってくればいいだろう。きっとシークも寂しがってる」 「………」 「なんだよ」 振り返ったリィは、不思議だとでもいう表情で。 「寂しくない。あそこにいるなら安里たちがいる」 「あぁ〜、だからそういう意味じゃなくて……」 まともだと期待した自分がバカだった。そうルキオがため息をつきかけた時、歩き出したリィがポツリと言う。 「それに」 「?」 「子猫ちゃん怖がるもん俺のこと。いなくてホッとしてるかも」 柄にもなくずいぶん可愛いことを。 「あぁ、それで『いるなら』って? で、どこかに逃げてるとでも思ってんのか?」 「子猫ちゃんは逃げないよ」 「はぁ? 支離滅裂だぞ」 「何が? だって子猫ちゃんは俺から離れられない」 「………やっぱりお前訳分からん……」 全然可愛いくない。全然まともじゃないし、シンプルじゃない。 むしろ複雑怪奇。 「もうどうでもいいからサクサク歩きやがれ……」 [前へ][次へ] [戻る] |