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 首筋に感じた甘い痛みで、過去の記憶から解放される。
 いつの間にかジェスに組み敷かれる格好。

「歯立てない……の前に、消毒」
「大丈夫」

 黙らせるように舌を絡み取られて。

「ん……、絶対腫れるよその顔」
「イテっ」

 変色した口元に触れた途端ジェスが身を離した。

「どこが大丈夫?」
「……」

 視線が泳ぐ。
 子供じみた仕草がこの上なく愛しい。

「ジェス。ジェスに何かあったら立ち直れないんだからね? 分かってる?」
「分かってる、と思う」
「バカ」
「バカバカ言い過ぎだろ」

 乱れた髪をかきあげてジェスが笑う。
 おおらかなこの瞳に、どれほど救われているだろう。

 カインを失った数年前、生きている自分が信じられなかった。
 大きすぎる喪失感に憎しみさえかき消された。



 君が、いなかったら。
 きっと壊れていたから――。



「ジェス。愛してる」
「それは分かってる」

 手を伸ばせばこたえてくれる君が、こんなにも側に。

「あ。消毒」
「……アン、それいやがらせ?」
「?」
「もう限界」
「…………バカ」












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あきゅろす。
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