7 首筋に感じた甘い痛みで、過去の記憶から解放される。 いつの間にかジェスに組み敷かれる格好。 「歯立てない……の前に、消毒」 「大丈夫」 黙らせるように舌を絡み取られて。 「ん……、絶対腫れるよその顔」 「イテっ」 変色した口元に触れた途端ジェスが身を離した。 「どこが大丈夫?」 「……」 視線が泳ぐ。 子供じみた仕草がこの上なく愛しい。 「ジェス。ジェスに何かあったら立ち直れないんだからね? 分かってる?」 「分かってる、と思う」 「バカ」 「バカバカ言い過ぎだろ」 乱れた髪をかきあげてジェスが笑う。 おおらかなこの瞳に、どれほど救われているだろう。 カインを失った数年前、生きている自分が信じられなかった。 大きすぎる喪失感に憎しみさえかき消された。 君が、いなかったら。 きっと壊れていたから――。 「ジェス。愛してる」 「それは分かってる」 手を伸ばせばこたえてくれる君が、こんなにも側に。 「あ。消毒」 「……アン、それいやがらせ?」 「?」 「もう限界」 「…………バカ」 [前へ][次へ] [戻る] |