6 落ちてしまったテンションはなかなか戻らなくて。 妙に罪悪感。 「ねぇジェス」 「ん?」 「キスを」 見上げた先には、思いの外不安げな安里の瞳。 久し振りなわけでもないのに、抱きよせる手が少し緊張した。 触れた唇の冷たさに動揺の大きさを知る。 「アン、ごめん」 「謝るならこんな格好になる前に帰って来いって」 「だからそれは無理だってば」 安里が諦めたように大きなため息をつく。 「……クレオは、元気だった?」 「んー。相変わらず年甲斐もなく露出しまくったカッコしてたな」 「ふふ」 安里が初めて会った日も、最後に会った日も。 彼女は奇抜なファションだった。 崩れ落ち、爆発を繰り返すビルの谷間では浮きまくった姿。 その女が燃え盛るビルの群れを作り出した張本人だなんて、欠片も思わなかった。 艶やかな笑顔でカインの銃を投げ寄越されるまで。 『あなたがアサトね。すぐ分かったわ。カインからの遺言よ――……』 後のことはよく覚えていない。 次に見たのは黄ばんだ天井で。 血に濡れた小さなリングを握りしめてた――。 「あ……」 [前へ][次へ] [戻る] |