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 落ちてしまったテンションはなかなか戻らなくて。
 妙に罪悪感。

「ねぇジェス」
「ん?」
「キスを」

 見上げた先には、思いの外不安げな安里の瞳。
 久し振りなわけでもないのに、抱きよせる手が少し緊張した。
 触れた唇の冷たさに動揺の大きさを知る。

「アン、ごめん」
「謝るならこんな格好になる前に帰って来いって」
「だからそれは無理だってば」

 安里が諦めたように大きなため息をつく。

「……クレオは、元気だった?」
「んー。相変わらず年甲斐もなく露出しまくったカッコしてたな」
「ふふ」

 安里が初めて会った日も、最後に会った日も。
 彼女は奇抜なファションだった。
 崩れ落ち、爆発を繰り返すビルの谷間では浮きまくった姿。
 その女が燃え盛るビルの群れを作り出した張本人だなんて、欠片も思わなかった。
 艶やかな笑顔でカインの銃を投げ寄越されるまで。


『あなたがアサトね。すぐ分かったわ。カインからの遺言よ――……』


 後のことはよく覚えていない。
 次に見たのは黄ばんだ天井で。
 血に濡れた小さなリングを握りしめてた――。

「あ……」



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