[通常モード] [URL送信]


「どうぞ」

 戻ってきた安里の手にはマグカップが二つ。
 甘い香りにつられて手を伸ばす。
 蜂蜜入りのホットミルク。

「ありがとう」

 しばらく無言で暖かいミルクを舐めていた。

「……安里さんも眠れないの?」
「うん? そうじゃないけど……いつも寝るのは明け方だから」
「そうなんですか」
「外見てぼーっとしてたりする」

 安里が向けた視線を追って、ついさっきまで立っていた窓を振り返る。
 星のない黒い空が明るいのネオンに染まっていた。

「願い事でもしてたの?」
「え?」
「祈ってるみたいに見えたから」

 胸の前に手を組んで。一心に願いを。

「あー、違うんです。ただ見てただけ。コレは、癖で」

 安里の言葉に苦笑する。
 同族達にも信仰する宗教があったのか。シークには分からない。
 彼が生まれる随分前に祖先達は汚染が進んだ故郷を棄てた。そう聞いた。
 外見上の特徴が同じでも、今ではルーツが同じ他種族としか感じられない。
 様々な星に移り住み、散ってしまった一族。
 記憶の隅に、微かに残る両親は似たような外見だった気がする。

「つい握りしめちゃうんです、コレ」



[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!