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「……どちら様?」

 気の抜けたようなジェスの声に、パスタをつついていた安里も顔を上げた。

「誰?」
「知らん。かわいー子が立ってるぞ。お前の客か?」
「お客にここを教える訳ないでしょう」

 ジェスの後ろからパネルを覗き込むと、おろおろと落ち着かない様子で、不安げに揺れる瞳が映し出されていた。
 安里にも見覚えが無い。

「知らないな」

 安里の反応を見ていたジェスの瞳が「追い返すか?」そう聞いている。
 頼りない様子だからといって、無害だとは限らない。
 ここはそういう街だ。

「君は……」

 誰? そう続ける前に画面がそれまで見えなかった人物を映す。

『入れろよ安里』

 深い闇色の瞳。

「げ。リィ」

 ジェスがさも嫌そうな声を漏らす。
 時には手を組む二人だが、そこはやはり商売敵。

「今開けるよ」

 安里は動かなくなったジェスを押しのけてパネルに触れると、入り口の鍵を解除した。
 程なくして相変わらず黒ずくめの男が姿を現す。
 知り合ってから随分経つが、お互いの家を訪ねたことは無い。
 時々仕事で組むジェスと違い、安里はリィに会うこと自体久し振りだった。



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