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三
「ん……」
いつも寒くて起きるけど、今日はあったかい。
「んー」
あったかくて、すっごい抱き心地がいい。
「んー……?」
あ、そういえば智春が来てるんだっけ……。
本当にあったかい。
冬は毎日来てくれないかな、と馬鹿なことを考える。
そろそろ大門が開く時間だ。
抱きしめてくれている腕をゆっくり下ろして、布団から静かにでる。
簡単に髪の毛を揃えて着物を羽織ると、智春がもぞもぞ動いた。
「……智春」
「んー……」
「智春、時間」
ゆさゆさ揺すって起こすこの時間が、すごい楽しく感じる。
「智春ってば、起ーきーてー」
掛け布団を剥いでやろうか、というところでやっと覚醒したらしい。
「んー、なんでこんなに気持ちいいんだろ。ここ」
「ただの普通の布団だろ。さ、早く」
急かすんだけど、また寝そうな勢いだ。
「春菊と寝ると、すっごくぐっすり寝れるんだよねー」
「はは、抱き枕が必要なの?」
俺もアンタと一緒だとよく眠れるよ、と言いながら腕を引っ張って起こす。
「おはよう」
「……おはようございます」
あ、ほんとは俺から言わなきゃいけないのに。
ったく、智春といるとペース狂わせられすぎ。
朝餉はいつもいらないという智春。
それは少しでも節約するためか、と勘ぐってしまう。
「車は?」
タクシーを呼ぼうかと、上着を渡しながら聞く。
顔も洗って、すっかりいつもの智春になっていた。
「いいよ。歩いて帰るのも楽しそうだし」
……アンタはふらふら車道に入りそうで怖い、とはさすがに言っちゃいけないと思った。
一応お客様だし。
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