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「ばっか、やろ……っ!」
朝、主人を起こしに行ったら、毎度のことながらベッドに引きずり込まれてしまった。
「い〜じゃないの。ほれ」
「ひゃぅっ……!?」
一気に下から貫かれ、葉月は目を見開く。
「やっ……だめ……っ」
清々しい朝の筈なのに、男を跨いでる自分が恥ずかしくて。
でも、体は快楽を貪っていて。
『来い・脱げ・乗れ』の3拍子が似合いそうな鷹哉は、専属メイドの葉月を自分の無茶苦茶なペースで振り回す。
悔しいから鷹哉のパジャマを握り締めて、潤んだ目で睨む。
くそっ、いい歳こいて朝っぱらからなにやってんだよ……っ!
ベッドに倒され、あちこちいじられたあと、乗せられちゃって。
慣らされてしまった体は、鷹哉を美味しそうに食む。
「んん〜っ、んぅっ」
鷹哉の首に回した手で口を塞ぐ。
下働きと御曹司とがこんなことをしているなんて、通りかかった誰かに聞かれたら大問題だ。
そんな葉月の考えを知ってか、手を剥がす。
「もったいねぇな。塞ぐなよ」
「あぅんっ、だってっ」
「いいから。……聞かせろよ、お前の声」
耳朶を噛みながら囁かれた声は、低くて艶っぽい、男らしい格好の良いテノール。
心地よく、胸に響く。
鷹哉は葉月の中心を握ると、扱きたてた。
「やだっ……馬鹿っ、触んな……っ」
濡れそぼったそこは、鷹哉の指によってびくびくと震えている。
「馬鹿だぁ〜? こんな気持ち良さそうにしてるのに、んなこと言ってずるくね?」
いじる手をやめてくれない。
それどころか葉月を激しく揺さ振る。
「あぅ……っも、だめぇっ……あぁっ!」
言うなり大きな掌に勢い良く放つ。
今日もまた、鷹哉によってイかされてしまった――…。
「はぁ……」
今日もまた、散々な一日の始まりだ。
鷹哉を広い浴室に突っ込み、シャワーを浴びさせて、さっさと会社へ送り出した。
一人慌てる葉月とは裏腹に、鷹哉は余裕綽々でコーヒーなんか啜ってて。
「早く着替えろよっ!」
って言っても。
「じゃあ葉月が着替えさせて〜」
まるで子供みたいな声出すし。
「そんくらい自分でやれっ! バカタカヤ!」
可愛い、とか思っちゃった自分が阿呆らしい。
送り出す時も。
「じゃあな」
やっと出て行くと思ったら、使用人みんなの前で尻なんか撫でてきやがるし。
二人の時なら未だしも……いや、二人っきりでも勘弁だけど!
恥ずかしくて、顔に鷹哉の鞄を投げ付けてやった。
「おっと」
今日の会議で使う書類とか色々入ってて重いのに、軽〜くよけやがって。
よけるだけじゃなくてちゃんとキャッチしてる辺りがむかつく。
「腕上げて待ってろ。俺が老いぼれになったって当たんねぇだろーけどな」
にっと笑い、「行ってくる」ってひらひら手振って。
その、笑顔が好きなんだよなぁ〜、多分。
専属の特権『お見送り』はしてやらないけど。
みんなが早々といなくなった玄関で一人。
「……行ってらっしゃいませ」
聞こえないように言い、静かに頭を下げるのが葉月の日課。
まぁカタチだけでもね。
一応あんなんでもご主人様だし。
事故られたらやだし。
いや、俺がやれば事故んないわけじゃないけど。
双子の花月だって、きちんと鷹通様に付いてるんだし。
でもバカタカヤは、兄の鷹通様と違って口悪いし意地悪いし性格悪いし……。
我ながら鷹哉のどこがいいんだか。
ふぅ、と息をついて部屋に戻る。
鷹哉に部屋に。
最近は別棟にある自分の部屋に戻ってないなぁ、とぼんやり思う。
いきなり抱かれて、ずるずると体だけのお付き合いを早2年。
無理矢理だったとはいえ、気持ち良くされちゃ、好きになるのかな。
鷹哉もただ抱くだけで、好きも嫌いもなぁんにも言わないし。
あ〜あ、なんか考えんのやんなっちゃうな〜。
葉月は一人ゴチて、とぼとぼと広い屋敷を歩く。
鷹哉の部屋を掃除してても、雑念はちっとも払えなくて。
バカタカヤの所為で、その……まぁ、色々と汚れたシーツを片付けるのも自分。
なんでいきなり抱かれて疲れてんのに後片付けをしなきゃなんねぇんだ?
どっちみち、人になんか見せらんないから自分でやるんだろうけど。
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