Target 58:その時救いの神が目覚める


遠くに響く爆音が激しくなる。
ユニは、静かに語りだした。
クオーレリングという、都市伝説について。


「誰が作ったのかもわからない―――マフィアの長い歴史の中に突然その存在を現したそのリングは、元は7зとはまったく関係のないものでした。
心を炎に変える、それは言わば持ち主から感情を吸い取ることです。
長い時を刻んできたこのリングにも、これまで何人もの適合者がいました。
しかし全ての適合者が同じように使えた訳ではないのです。
その力は強大ゆえに適合率が低ければリングに心を取り込まれて感情も意志もないただの人形と成り果ててしまう…
次第にクオーレリングは呪いのリングと呼ばれ裏の世界からその存在を忘れられていきました」


その後、リングが悪意ある者によって使われることのないように、所有者ともどもリングを保護していたのはボンゴレ9代目。
あるとき、9代目とその守護者は、リングについて驚くべき力があることを知る。

7з―――ボンゴレリングの炎とクオーレリングが共鳴したその時、クオーレリングとその所有者が忽然と姿を消してしまったのだ。


「え?でも…ディーノさんが見つけた文献には、7зとその守護者も消えてしまうって…」

「それは、彼らが立てた仮説によるものでしょう。
実際、7зがここにあるのですから、守護者と一緒に消えた実例はありません。
ですが、この仮説は有力だと思います。クオーレリングとボンゴレリングが共鳴したときに、陽炎が出現したのです…
その陽炎が非7з線―――ノン・トゥリニセッテと酷似した物質だと言われているからです」

「非7з線!?」


ユニの言葉に綱吉が反応する。
それは、この未来の世界に来て、リボーンやラルなど、アルコバレーノを苦しめた存在だった。
その名前を忘れるはずもない。


「ここからは、私が視てきたものを繋ぎ合わせた想像ですが…
その消えた当時のクオーレリングの所有者がさくらさんだったのではないかと思うのです」

「わた、し…?」

「なるほどな。さくらとクオーレリングの適合率はあまりにも高すぎる…それは言わば一心同体だ。
さくらが元々いた世界が、無数にあるパラレルワールドのひとつで、消えたんじゃなくリングの力でパラレルワールドを越えたってわけか」


リボーンは帽子を深くかぶりなおし、顔に影を落とす。
綱吉が納得いかなそうに声を上げた。


「けど…9代目の頃はさくらさんだって今より小さかったはずだし…
さくらさんは、10年バズーカみたいに時を越えたってこと…?」

「それは…まだわかりません。
ですが、ひとつ言えることは、さくらさんは元々この世界の人間だったということです」


以前、六道骸に出会ったとき、彼はさくらのことを知っているような口ぶりだったことを思い出す。
そう考えれば、ユニの仮説は説得力のあるものに思えた。さくらはリングを強く握りしめる。そのとき。


「さくらさん!?」

「な…なにこれ…!」


突然、何をしたわけでもなくリングに炎が灯る。
その炎は次第に大きくなっていき、ゆらり、と世界が歪んだ。




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あきゅろす。
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