「大丈夫か?少し休むか?」
「まだ…はぁ、だ、大丈夫…はぁ」
森の中をひたすら走る。途中山本が何度もさくらを気遣うが、さくらはそれでも立ち止まらなかった。
早くスクアーロに会いたい。無事を確かめたい。
その一心で走り続けた。
チョイス会場から帰ってきたときに一度だけ入ったアジトに再び足を踏み入れる。
簡単に見つからないよう念入りに隠されているだけあって、入口はほとんど崩れていない。
しかし奥へ進んだ途端にさくらは言葉を失った。
柱は残っているものの、部屋を区切っている壁は、ないも同然に瓦礫となって崩れている。
「スクアーロ、さん…スクアーロさん!」
「あ、おいさくらさん!走ると危ねーぞ」
山本の制止の声も聞かず奥に向かって駆け出す。
この瓦礫の中にいるかもしれない―――さくらは手が傷つくのも厭わず瓦礫の山を掻き分けた。
「スクアーロさん…スクアーロさん!無事なら返事してください!
なんで…応えてくれないんですか…わたしの声、聞こえてるんでしょう!?生きてるんでしょう!?」
「…私たちも手分けして探しましょう」
「だな」
それからどれくらい探しただろうか。
スクアーロと最後に別れた場所の付近はあらかた探し終わり、希望を捨てそうになったそのときだった。
血だらけの手で瓦礫を押し退けたさくらの目に、見慣れた紋章が目に入った。
ヴァリアーのメンバーが隊服の胸につけている紋章だ。
「っ…!!」
うつ伏せに倒れているスクアーロを、山本の助けを借りてやっとの思いで助け出す。
しかしスクアーロは目を固く閉じたまま微動だにしない。
「しっかりしろ!スクアーロ!」
「スクアーロさんっ…目を開けてください…!!」
血の気の引いた白い肌に溢れた銀髪だけがきらきらと光り、顔についた血はまるで作り物のようだ。
ぽた。さくらの目から溢れた滴がスクアーロの頬を濡らしたそのとき。
「……るせぇ…よ…」
「!!」
弱々しくスクアーロが目を開けた。
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