Target 54:もし神がいるとするなら



チョイスが行われる約半日前、イタリア。
ヴァリアーの屋敷内を忙しなく歩き回るルッスーリアとベルフェゴールの姿があった。


「めんどくせー。なんで俺ばっかりこんな雑用やらされなきゃいけねーんだっての」

「他のメンバーはミルフィオーレの残党狩りに行っちゃってるのよぉ。
アタシは怪我人の治療でてんてこ舞いだし、フランちゃんは一足先に日本に向かってるみたいだし」

「は?フランのやつ女の所に行くとか言ってたじゃねーか。
さくらのこと諦めたのかと思ってたとこなんだけど」

「さっき連絡が来てたのよー。なんでも取り戻すモノ取り戻したからって。
ベルちゃんも早くさくらちゃんに会いたいでしょ?
だったら、自家用機の手配くらい手伝ってくれたっていいんじゃなぁい?」


あっけらかんと言うルッスーリアに、ベルフェゴールは思わず舌打ちをした。
さくらに会うためでなければ、わざわざこんな面倒な雑用をすることなんてない。
突然、ルッスーリアの声のトーンが変わる。


「…ねぇ、アンタたちわかってるわよねぇ?アタシたちとさくらちゃんは違うってこと。
さくらちゃんは元の世界に帰るべきなのよ。あんなリングに縛られてこんな血生臭い世界にいちゃダメだわ」

「は?んなことわかってるっつーの」

「わかってないわよ。アタシたちは暗殺部隊ヴァリアーなのよ?
本来なら一緒にいるべきじゃないんだわ…恋のライバルごっこも結構だけれども、アンタたちのがもし、あの子と結ばれたとしてあの子の命が危険に晒されないとでも?」

「…んなの、王子が守るに決まってんだろ。関係ねーよ」


ルッスーリアの言うことはもっともだった。裏の世界に敵を作りすぎているヴァリアー。
そのヴァリアーの側に一般人がいることがどれだけ危険か、ベルフェゴールにもわかっている。
リングを持つ時点でさくらを一般人とは言い切れないが、少なくとも彼女はこっちの世界に来るまでは裏の世界とは無縁の生活を送っていて、そしてこれからもそうなるはずだった。


「ベルちゃんがさくらちゃんのことを好きだと言う気持ちを否定してるわけじゃないわよぉ。
ただ、あの子の幸せも考えてあげてね」


ルッスーリアはそれ以上何も言わず、無言で屋敷を出ていった。
足音が遠ざかった頃、ガンっと大きな音が屋敷内に響く。
ベルフェゴールは歯を食い縛ったまま壁を力任せに殴り付け、しばらくその場から動くことをしなかった。



もし神がいるとするなら



なぜこんな出会い方でなくてはいけなかったのか






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