Target-25:それは最後の言葉

今日は雨が降っていた。
日に日に空気がピリピリと張り詰め、戦いが近いという事が嫌でも分かる。


「明後日、か…」


そう呟いた時、バタンと大きな音がし、私は飛び上がった。


「さくら、いるかぁ」

「スクアーロさん!」


スクアーロさんの長い髪は雨に濡れていて、とんでもなく色っぽかった。
私はタオルを差し出す。しかし、スクアーロさんは私の顔をみつめたまま黙っていた。


「スク、アーロさん…?」

「…すまねえ…」

「なにが…わっ」


いきなり、スクアーロさんが私を引き寄せ、その腕で強く抱き締めてきた。
まるで、私がそこにいるのを確かめるかのように、強く。


「…お前を巻き込んで、すまねえ」

「そん、な…スクアーロさんのせいじゃ」

「お前を残すと決めたのはオレだ。
やっぱり日本に行かせれば良かった…」

「…私が選んだんですから。私が自分で、ここに残るって決めたんです」


私はスクアーロさんの背中に腕を回し、同じくらい強く抱きついた。
ここにいるスクアーロさんは薄っぺらい漫画の中の人物なんかじゃなくて、ちゃんと血の通ってる、温かい人間だ。


「さくら…明後日の戦い、お前はボスと一緒にいろぉ」

「え?」

「オレらは外に行かなきゃならねぇ…ボスと一緒にいるのが一番安全だ」

「…はい」


不意に、スクアーロさんの顔が近づき、至近距離で見つめられて顔に熱が集まる。


「お前に出会えて良かった」

「…私もですよ」


そう言って私の額に優しく口づけるスクアーロさんは、泣きそうな顔をしていた。

―――ミルフィオーレ攻撃まであと2日


それは最後の言葉





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あきゅろす。
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