今日は雨が降っていた。
日に日に空気がピリピリと張り詰め、戦いが近いという事が嫌でも分かる。
「明後日、か…」
そう呟いた時、バタンと大きな音がし、私は飛び上がった。
「さくら、いるかぁ」
「スクアーロさん!」
スクアーロさんの長い髪は雨に濡れていて、とんでもなく色っぽかった。
私はタオルを差し出す。しかし、スクアーロさんは私の顔をみつめたまま黙っていた。
「スク、アーロさん…?」
「…すまねえ…」
「なにが…わっ」
いきなり、スクアーロさんが私を引き寄せ、その腕で強く抱き締めてきた。
まるで、私がそこにいるのを確かめるかのように、強く。
「…お前を巻き込んで、すまねえ」
「そん、な…スクアーロさんのせいじゃ」
「お前を残すと決めたのはオレだ。
やっぱり日本に行かせれば良かった…」
「…私が選んだんですから。私が自分で、ここに残るって決めたんです」
私はスクアーロさんの背中に腕を回し、同じくらい強く抱きついた。
ここにいるスクアーロさんは薄っぺらい漫画の中の人物なんかじゃなくて、ちゃんと血の通ってる、温かい人間だ。
「さくら…明後日の戦い、お前はボスと一緒にいろぉ」
「え?」
「オレらは外に行かなきゃならねぇ…ボスと一緒にいるのが一番安全だ」
「…はい」
不意に、スクアーロさんの顔が近づき、至近距離で見つめられて顔に熱が集まる。
「お前に出会えて良かった」
「…私もですよ」
そう言って私の額に優しく口づけるスクアーロさんは、泣きそうな顔をしていた。
―――ミルフィオーレ攻撃まであと2日
それは最後の言葉
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