Target-21:束の間の平穏



ヴァリアーに来るボンゴレの情報伝達係は、日ごとに担当が変わる。
しかし、みんなザンザスさんを恐れて若い人は来たがらない。
そんな中、唯一私と歳が近いのが19歳のロッシさんだった。

最初の頃は「さくら様」と呼ばれていたのが幾度か会話を交わすうちに、私のお願いもあって「さくらさん」と呼んでくれるようになった。


「あれロッシさん、その鉢植えはなんですか?」

「スィリクワストロといいます」

「スィリク…?」

「ジャッポーネで言うところのハナズオウの事ですよ」


ロッシさんの持つ鉢植えには、苗木に小さなピンク色のつぼみがついていた。
少し日本の桜に似ている気がする。


「上司に頂いたものですが、置き場所に困ってしまって。
よろしければ、さくらさんのお部屋に飾って下さい」

「あ、ありがとうございます」


ロッシさんからその小さな鉢植えを受け取る。
その時、聞き慣れた声が私を呼んだ。


「う゛お゛おい、さくら!」

「あ、スクアーロさん」


スクアーロさんは、私の持つ鉢植えにチラッと目をやり、そしてロッシさんに視線を移す。
ロッシさんはピシッと会釈をするとその場から離れた。


「ルッスーリアが茶請けに和菓子を買ったらしい。
和菓子に合う紅茶を選んで欲しいってお前の事を呼んでたぜぇ」

「分かりました!あ、そしたら、この鉢植えを私の部屋に置いてきてもらっていいですか?」

「ああ」


スクアーロさんに鉢植えを渡すと、厨房に向かう。
受けとった鉢植えを見るスクアーロさんの目に、殺気が宿っていたことを私は知らない。


―――ミルフィオーレ攻撃まで、あと6日



束の間の平穏


(確かスィリクワストロの花言葉は、)





[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!