ヴァリアーに来るボンゴレの情報伝達係は、日ごとに担当が変わる。
しかし、みんなザンザスさんを恐れて若い人は来たがらない。
そんな中、唯一私と歳が近いのが19歳のロッシさんだった。
最初の頃は「さくら様」と呼ばれていたのが幾度か会話を交わすうちに、私のお願いもあって「さくらさん」と呼んでくれるようになった。
「あれロッシさん、その鉢植えはなんですか?」
「スィリクワストロといいます」
「スィリク…?」
「ジャッポーネで言うところのハナズオウの事ですよ」
ロッシさんの持つ鉢植えには、苗木に小さなピンク色のつぼみがついていた。
少し日本の桜に似ている気がする。
「上司に頂いたものですが、置き場所に困ってしまって。
よろしければ、さくらさんのお部屋に飾って下さい」
「あ、ありがとうございます」
ロッシさんからその小さな鉢植えを受け取る。
その時、聞き慣れた声が私を呼んだ。
「う゛お゛おい、さくら!」
「あ、スクアーロさん」
スクアーロさんは、私の持つ鉢植えにチラッと目をやり、そしてロッシさんに視線を移す。
ロッシさんはピシッと会釈をするとその場から離れた。
「ルッスーリアが茶請けに和菓子を買ったらしい。
和菓子に合う紅茶を選んで欲しいってお前の事を呼んでたぜぇ」
「分かりました!あ、そしたら、この鉢植えを私の部屋に置いてきてもらっていいですか?」
「ああ」
スクアーロさんに鉢植えを渡すと、厨房に向かう。
受けとった鉢植えを見るスクアーロさんの目に、殺気が宿っていたことを私は知らない。
―――ミルフィオーレ攻撃まで、あと6日
束の間の平穏
(確かスィリクワストロの花言葉は、)
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