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七堂伽藍
九時間目。


そんなことを話しているうちに、保険医の家に着いた。

「ここですよ。」
「ここ…?」

ルークは保険医の家を見上げる。…そう、それは大きくて立派な家だった。屋敷と言ってもいいかもしれない。

「でかい家だな…おれんちの犬小屋くらいある…」
「…そういわれると大きいのか小さいのか分からないのですが…」

よいしょ、と保険医はルークを抱き上げる。…軽い。

「…サフィ…一人暮らし?」
「はい。」
「じゃあ…なんでこんな大きな家に…?」

かえって寂しくないか、と、ルーク。

「…ここは、私を拾ってくれた下級貴族の女性とその家族が住んでいたお屋敷です。」
「…拾ってくれた…?」

にこ、と微笑む保険医。

「私、物心つく前に捨てられました。ダンボールに入れられて…捨て猫みたいに…」

「………」

「でも、ゲルダが育ててくれて、ゲルダのご両親もすごく可愛がってくれて…でも…」

「…亡くなった…?」

「はい。…中学校に上がった頃でした。」

ルークは荒れた庭に眼を遣る。涸れた池、朽ちた薔薇の木、雑草が生えっぱなしの庭。


…きっと、一人では手に負えなかったのだろう。

「だから、この家はゲルダの遺産なんです。…あの車も…生前ドライブが好きでよく乗っていたものです。」

ふわり、と熱を帯びたルークの手が頬に触れる。


慈しむようなその感触に、保険医は眼を細めた。












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