[携帯モード] [URL送信]

鐘撞き堂
ゆびきり オリイオ♀ルク。パロ※
【 ゆびきり 】


「あ〜たりぃ…まじかったるいってこういうことをいうんだろうね…まったく…報恩講なんてやってられないよ…」
黙っていれば真面目そうに見える深緑の髪の僧侶が愚痴を言いながら夜の街を歩く。
「うぃ〜っく!」
どん、と見窄らしい着物の男がぶつかっていく。酒気混じりの口臭に気分が悪くなり、思わず舌打ちした。
「チッ…酒でも煽ろうかと思ったけど……ああはなりたくないね…」
酒には弱いしね、と僧侶。
そのとき、ふわりと香る香水の香り。僧侶はぽつぽつと明かりが灯る路地に視線を遣る。
「…色街か…」
木製の檻に囲われる艶やかな着物を纏う女たち。
僧侶は自分の財布の中を覗く。少ないとは言わないが、最上位の遊女とよろしくやるには足りない。
「…仕方ない。」
僧侶は溜め息をついて、檻の中から誘う女たちを品定めする。
黒髪のツインテールは香水がきつすぎる。
金髪のボブカットは白粉塗りすぎ。
灰茶のロングヘアー…あれは絶対性格悪い。ていうか問題外。
僧侶は次々と女たちにダメ出ししていく。…勿論、心の中で。
「…ん…?」
僧侶の目に留まったのは、ぼうっと格子に掴まって外を眺めている少女。朱色から金に色移りする綺麗な長い髪をしていて、同色の長い睫毛に彩られる瞳は美しい翡翠のよう。不安げに揺れる瞳が堪らない。
…かわいい…
僧侶は格子に近づいていって、綺麗な翡翠の瞳を覗き込む。少女はぎくり、と身を硬くした。
「あの〜すみませーん!」
僧侶は女郎屋の客引きの男に声を掛ける。少女は指名されると思ったのか、檻の奥へ逃げていく。
「気に入った娘がおありで?」
僧侶はせかせかと近寄ってくる男ににっこりと笑って、
「ええ。…あの赤い髪で翡翠色の瞳の白い着物を着た、金魚みたいな女の子一晩ください。」
さっきの少女を指差して、これでもかというくらい特徴を述べる。
僧侶は少女に向かってニッと口角を上げる。
赤い髪の少女はこの世の終わりみたいな顔をしていた。




僧侶は赤い髪の少女を伴って、女郎屋の奥へ進んでいく。少女はずっと無言で、僧侶のことを見上げているのだが、目が合うと逸らす、ということを繰り返していた。
「…なにかしゃべってくれないのかな?…それとも口が効けないの?」
少女がきょとんと僧侶を見つめる。
「…話してもいいのか…?」
「僕としてはそちらのほうが嬉しいね」
僧侶は少女に微笑む。
「…その格好、お坊さん?」
「そうだよ。…不本意ながら親の跡を継いで住職さ。」
少女は眉を寄せる。
「…お坊さんの癖にこんなところに来ていいの…?」
僧侶は溜め息をつく。
「あのね、お坊さんは大変なんだよ?悪酔いするような安くて不味い酒を、会いたくもない門徒さんと酌み交わさなきゃならないんだ…キレイなオネーチャンと遊びたくもなるよ。」
少女は首を傾げる。
「おれ…きれいでもおねーちゃんでもないけど…」
くす、と僧侶は笑って少女の頭を撫でる。
「そうだね…確かにせくしーなオネーチャンじゃない…でも、君は綺麗だよ?…自信を持ったら?」
「はあ…」
そんなことを話しているうちに目的の部屋に到着した。
「こちらでございます」
「ああ、ありがとう。」
「二時間程しましたら声を掛けに参りますので…」
「わかったよ」
僧侶は少女を中に通して障子をぱたんと閉める。
「さて…なにをしてくれるのかな?」
「ごめん…」
「ん?」
僧侶が微笑むと少女がいきなり謝った。
「おれ…おれ…今日の昼来たばっかで…!」
瞳を潤ませる少女を宥める様に頭を撫でる。少女と視線を合わせる為に屈む。
「…今日此処に?…どうして?」
「売られ…た…口減らし…」
「…此処が…どういうことをするところか…知ってるの?」
少女は俯く。
「カラダを売るところ…って女将さんが…腎臓とか…取られるのかな?」
僧侶はぷッと吹き出す。
「うぇ?」
「そんな…ヤクザじゃあるまいし…まあ、それは男がお金無いときにすることだね。」
「内臓とられないの?」
少女が眼を見開く。
「とらないよ。」
「じゃあ…なにするの?」
僧侶はすぅ、と目を細める。
「裸にされて…身体中をメチャクチャにいじくられて…すっごく…ヤラしいことするって言ったら…どうする…?」
少女は顔を真っ赤にする。
「…逃げちゃう…?」
つつ、と着物の上からカラダを指でなぞられて少女がびくりと身を固くする…が、
「おれ…にげないよ。」
「嫌じゃないの?」
「だって…そのためにここに居て、女将さんはおれがそういうことされると儲かるんだ…」
だから、と幼い瞳が見上げる。
「じゃあ…いいんだね?…僕は手加減なんて出来ないけど…」
「いー…よ…」
僧侶はゆっくりと少女を薄っぺらい布団の上に押し倒した。
「…名前は?」
「…ルーク…」
ちゅ、と音を立てて桜色の唇に口付ける。
「そう…かわいい名だ…」
「あんたは…?」
「僕はイオン。…まさか女郎屋で名前を聞かれるなんて思わなかったな」
「イオン…なんて呼んだらいい?」
「イオンでいい…イオンがいいな」
イオンはルークの帯を解いていく。しゅるしゅると衣擦れの音がいやらしい。
「あ…」
着物を肌蹴られ、小ぶりで形の良い胸がふるん、と揺れる。
「…今幾つ…?」
「じゅう…よん…ふ…あっ…!」
イオンは鴇色に色づく先端を口に含む。もう片方はくりくりとこね回した。
「ああっ…んぅ…!ふぅあっ…!」
「そんな声だして…気持ちいいの…?」
「わからな…ッ…あ!」
イオンはルークの首筋に顔を埋める。
「いい匂い…これって香水じゃないよね…?」
「じゃあルークの匂いだね…?おいしそうだ」
「ひゃあうっ!」
ルークの首から耳の裏までをべろりと舐め上げる。時に歯を立てて、ルークに噛み付く。
「ルークは美味しいね。ほんのり甘くて…いい匂いで柔らかくて…」
「そんな…っ…あ!」
イオンが腰巻きに手をかける。
「腰巻き…も?」
翡翠の瞳が怯えに揺れる。
「そうだよ。…言ったでしょ?君の身体じゅう…メチャクチャにするって…」
「…っ…」
そう言って腰巻きを剥ぎ取る。読んで字の如し。…腰に巻いてあるだけの、ただの布切れ。
一糸纏わぬ姿になったルークの太腿を半ば強引に割開く。
「あ…」
ルークは羞恥に顔を赤くする。可愛らしい少女の性器は既にその花弁を濡らしていた。
「濡れてるね…初めて男に身体触られて感じちゃった…?」
「…濡れてると…どうなるんだ…?」
「この後の作業がよりスムーズだね。」
イオンはくちゅっと水音を立ててルークの秘所に舌を差し込む。
「やぁ…っ…!はぁ…っ…なんで…そんな…とこ…」
「…舐めるのかって…?…まあ、これだけ濡れていれば舐める必要なんて本来ないんだけど…」
反応が見てみたくて、と意地悪く笑うイオン。
からかうように舌で肉芽を弾くとルークの背がびくん、と弓なりにしなった。
花弁は快感に震えて蜜を零し、布団に染みを作っていた。イオンはそれを満足そうに見つめると袈裟に手を掛ける。
「じゃあ…そろそろ僕も脱がせてもらおうかな…?」
「げっ…」
思わず色気のない声を出すルーク。
「ひどいな。なにその反応?」
イオンはくつくつと笑いながら着物を肌蹴る。引き締まった上半身が露わになった。
ルークは恥じらう様に視線を逸らす。
「…初めて見た…?」
「ん…」
ルークは控え目に肯定した。
「じゃあ、これも初めてだ?」
「え…」
そう言ってイオンがルークの口元に持っていったのは自分の性器。赤く充血し反り返って透明な蜜でぬらぬらと光っている。
「やぁ…!」
ルークは思わず両手で顔を覆う。
「恥ずかしがってちゃだめだよ?…これからコレを…舐めてもらうんだから…」
「え…?」
ルークは耳を疑う。


くちゅ。ちゅるっ。くちゅ。
「ん…ふ…」
亀頭が喉の奥を突いて苦しい。ルークは口いっぱいのイオンの性器に懸命に舌を這わせた。
「そう…上手だよ…ルーク…」
反り返る性器を舌でゆっくりと何度も舐め、時々先端の窪みを擽るように舐める。
「もういい…とめて…ちゃんとくわえててね…」
ルークは舐めるのを止める。言われたとおりに、性器はくわえたまま。
「っ…!ふ…」
イオンが身体を震わせる。直後に、どくり、と青臭くて粘ついた苦いものが口の中に放たれる。
ルークは見たことも無い何かを嚥下する。吐き出すのは失礼だと感じたから。
「…どうだった…?」
「苦かった…」
イオンは可笑しそうに笑う。
「正直にマズイって言っていいんだよ?」
ルークはふるふると首を横に振る。
「じゃあ…本番だね。」
イオンはルークを抱き締める。さらさらと綺麗な朱色の髪を梳いた。
探るようにイオンの亀頭が自分の入り口を撫で回すのをルークは感じる。
「足…力抜いてね…」
ルークは言われたとおりにする−が、
「−−ッッッ!!」
硬くて熱いものが自分の身体を引き裂きながら進入する感覚に腰が逃げようとする。
「…我慢して」
イオンはルークの腰を捉えると、ずぶずぶと進入を再開した。
「つぅっ…あああ…っ…う…あ…!」
「痛いんだね…初めて…だもんね…」
ぼろぼろと涙が零れる。イオンは宥めるように涙を唇で拭った。
イオンは常に優しい言葉をかける。だが、言葉とは裏腹に激しくルークを攻め立てる。
ぱちゅぱちゅと、肉棒の抜き差しを繰り返す度に水音がルークの鼓膜を犯す。
「…どう?…まだ…痛いだけ…?」
「ふっ…あ…!ああんんっ!」
イオンの言葉に触発されたように、快感が電流のように背中を駆けた。ルークの嬌声にイオンは満足そうに微笑む。
「きもち…イイ?」
「う…ん…いお…ん…いい…よっ…!はぁっ…ああん!」
イオンが動く度にルークの口から甘い声が漏れる。
「ルーク…イイよ…ルークのナカ…すごく気持ちいい…」
「はっ…あ…ん…イオンも…いいの…?」
「うん…すごくイイよ…」
そのとき、障子の外から声がかかる。
「すみません…お時間ですが…宜しいですか?」
「いいところなのに…」
イオンはチッと舌打ちする。
「延長だ!」
「いかほど?」
「…二時間。」
「毎度〜」
ルークがイオンを見上げる。
「…延長?…二時間も?」
「ああ…これであと二時間はルークといられる。…イヤかい?」
ルークはふるふると首を横に振る。
「うう…ん…イオンと一緒…うれしい…うれしいの…」
ルークはきゅっとイオンに抱きつく。イオンもそれに答えるようにルークを抱き締めた。




それから僧侶はいつの間にか足繁く遊廓に通うようになっていた。
−−ルークに逢う為に。

「なぁ、イオン?」
「なんだいルーク?」
イオンはルークの赤い髪をさらさらと梳いて口付けする。
「こんな…おれなんかのとこに何回も通う金があったらアリエッタ姐さんとか…」
「アリエッタ姐さん?」
「えっと…ここの太夫…」
「最上位の遊女だね?」
「うん…だから…おれなんかよりもっといい女のとこ…いけるんじゃないかって…」
ルークはぼそぼそと話す。イオンは溜め息をつく。
「ルークは…僕にほかの女と寝ろって?」
「え…あ…えっと…」
ルークは寂しそうに俯く。イオンはルークの顎を捉え、深く口付けた。
「ん…」
唇を離すとイオンはルークに微笑む。
「あのね…僕は、ルークがいいんだ。どんな美人でテクニシャンの太夫より、ルークがいいの。」
だから通ってるんだよ、とイオン。ルークは真っ赤になった。
「え…と…じゃあ、ゆびきりしよう…か?」
「…ゆびきり?」
「遊女はね…心を許した人だけに…「またきてね」っていう想いを込めて、自分の小指を切って男の人に渡すの…だから…イオンにおれの小指…」
イオンは困ったように眉を寄せる。
「小指を切るなんて…痛いじゃないか…僕は、ルークの小指はルークに付いていたほうがいいな。」
そう言ってぱくりとルークの小指をくわえる。
「あ…」
「…決めた」
何を?とルークは首を傾げる。
「僕は、明日の夜、ルークを買う。」
ルークはきょとんとする。
「いつも買ってるじゃねーか」
「そうじゃない…この遊廓から、ルークを買うんだよ。ありったけのお金を積んで、僕のものにするのさ。」
ルークは慌てる。
「そんな…勿体無いよ!おれなんかにたくさんお金払うなんて…!」
どぶに捨てるようなものだ、とルーク。
「ルーク…僕は君が欲しい。」
イオンは真摯にルークを見つめる。
「ねぇ…僕のお嫁さんになって?お寺のご新造さんになるんだ。…大変だけど、いっぱい…いっぱい愛してあげる…」
「イオンのお嫁さん…に?」
「そうだよ。僕のお嫁さんになったら…そうだな…お饅頭いっぱい作って?」
ルークは首を傾げる。
「お饅頭…好きなの…?」
「うん…疲れたときは甘いものがいい。だから…お饅頭いっぱい作って、僕の帰りを待っていてよ。」
ルークはくすくすと笑う。
「わかった…イオンのためにいっぱいお饅頭つくってやる。」
「じゃあ、ゆびきりしよう。」
「え…」
イオンは目を丸くするルークの手を取って、小指に小指を絡ませる。
「ゆーびきりげーんまん、うーそついたら針千本の〜ます!」
「なに…歌…?」
イオンはにこ、と笑う。
「これもゆびきりって言うんだよ。約束を破らないっていう誓いさ。」
「たしかに針千本はきついな…」
「うん、だから約束だ。僕は明日の夜、君を迎えに行くよ。」


「ばいばい、イオン。」
「うん、また明日、ルーク。」
ルークは店の入り口でイオンを見送る。
「イオン、ちょっと屈んでくれ。」
「…?」
イオンは言われた通りに屈む。すると、
「−−っ!」
ルークの柔らかな唇がぶつかった。
「うれしいな…ルークから口付けだなんて。」
「うん…ばいばい。」


ルークはイオンの背中を見送る。
「…ばいばい…」




−次の日の夜、イオンは遊廓の裏口の戸を叩いた。
「すみません。」
「はい、なにか…?」
アップにした金髪とトルキッシュブルーの瞳の妙齢の女性が顔を出す。質素な身なりからして遊女ではない。
「ここの女将さんいますか?ルークを売ってもらいたくて…」
そう言ってイオンは持っていたアタッシュケースを開く。中にはぎっしりと小判が詰まっていた。女性は目を見開く。
「あの…失礼だとは思うが名前を…」
「イオンです。」
女性はすぅ、と目を細めた。
「…女将は私だ…ちょっと待っていろ。」
女将が奥に引っ込んでいき、暫くして出てきたのは、ルークではなく煌びやかな着物を纏った桃色の髪をもつ若い娘だった。
「あの…貴女…は…?」
「アリエッタはアリエッタです。ここの太夫なのです。」
ルークが言っていた“アリエッタ姐さん”とはこの娘か。
「ルークはどこにいるの?」
イオンの言葉にアリエッタは哀しそうに眉を寄せる。

「ルークは…今日の朝、息を引き取りました…です。」

イオンは呆然とする。
「冗談…だよ…ね?」
アリエッタは小さな巾着を差し出す。
「何…」
「中を…」
イオンはそっと巾着の中身を掌に落とす。それは−−

「小指…」

見間違うものか。
これは、ルークの小指。昨日自分がふざけてくわえたルークの小指だ。
小さな桜貝のようだった小指の爪は血の気がなく蒼白だ。
「貴方が来たら…渡して欲しいと頼まれた…です。」
イオンはどうして、どうして、と譫言の様に繰り返す。
「ルークは…自分の死期を…悟っていたみたい…です。」
アリエッタは紙の箱をイオンに渡す。中身は、
「お饅頭…です。昨日の晩…ルークは寝ないでこれを作っていました。」
イオンは言葉を失う。
「ルークは…息を引き取るその瞬間まで…貴方の名前を呼び続けていました…です。…自分は幸せだったと…そう言っていました…」




僧侶は寺の縁側に腰掛けて、お饅頭の入った箱を開けた。一つ手に取る。
でこぼこしていて、ところどころ皮が破れた、素朴な田舎饅頭。きっと、不慣れながら一生懸命作ったのだろう。

−イオンのために、いっぱいお饅頭作ってやる。

じわ、と視界が歪む。
「あれ…あれ…?」
ぽたぽたと不恰好なお饅頭に涙が落ちる。イオンは饅頭をかじった。
「ばか…」
また、ぼろぼろと涙が溢れた。

「ばか…ルーク…おまんじゅうしょっぱいよ…」

「…どうしたの?」
突然の声に顔を上げると、いつの間にか子供達に囲まれていた。慌てて袖で涙を拭う。
「…なんでもないよ。」
「あー!おまんじゅう!」
「おまんじゅうだっ!」
「おいしそう!」
子供達がお饅頭を指差す。
「ちょうだい!」
「ねぇちょうだい!」
イオンは困ったように眉を寄せる。
「ごめん…このおまんじゅうはあげられないんだ…」
えー、と子供達から非難の声が上がる。
「でも…これじゃないお饅頭ならいくらでもあげるから…」
「ほんと?!」
「うん…こんどお勤めいったらたくさんもらってくるよ。」
「わーい!約束だよ?!」
「うん…約束…」
小指を差し出すと、子供たちが指を絡める。




ゆびきりげんまん
嘘ついたら
針千本飲ます
指切った。




end.


あとがき
オリイオルク、遊廓パロディでした。
ゆびきりは客と遊女の間で行われていた風習です。「げんまん」は拳万と書き、げんこつ一万回のことです。
本命の客には自分の指を渡し、それ以外の客には試し斬りされた死刑囚などの小指を渡していたそうです。

[*前へ][次へ#]

8/16ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!