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鐘撞き堂
独裁看護 ルク+ジェイ。ギャグ
※注意!この小説には下ネタが含まれ、ジェイドが不憫です。





 【独裁看護】


「………」
−ジェイドが熱を出した。

宿のベッドで赤い顔をして横たわるジェイド。
「珍しいこともあるものですね。」
「鬼の霍乱ってやつか…?」
「大佐も人間でしたのね…」
「明日は槍が降るかもねぇ〜☆」
「みゅうう…なんとかは風邪をひかないというのはうそでしたの…」
好き放題言う仲間たち。
「とにかく大佐には休んでもらわないといけないわね…」
「じゃあティアが大佐の看病するの?」
「え…」
アニスの言葉にティアが固まる。
「わ…私任務が残っていたんだったわ!」
足早に出て行くティア。
「お…俺は食料の買い出しにいかないと…!」
「アニスちゃん急にパフェがたべたくなったな〜」
「じゃあわたくしと一緒にお茶しましょう。」
「僕はルークに栄養のあるものを採ってきます!」
「ミュウは森を焼きにいくですの!」
パタン…
哀しい音を立てて扉が閉まる。

ガイ以降は言い訳ですらない。イオン様、何故風邪をひいている私ではなくルークの食べ物を採りに行ったのですか…?そして最後のチーグル。…誰か止めろ。
そして、部屋に残ったのは、病気の中年男と赤毛の子供。
「…ルークが看病してくれるんですか?」
残った子供に皮肉を言ってみる。ところがルークは、
「…熱測って…」
冗談のつもりだったのに、本当に体温計を取り出した。
ジェイドはふぅ、と溜め息をつく。
「…冗談です。…寝ていれば治りますよ。」
だが、赤毛の子供は頑として動かない。
「…しょうがないですねぇ…」
ジェイドは根負けしてルークから体温計をひったくり、口にくわえる。
「…ジェイド…」
「何でしょうか」
「…言いにくいんだけど…」
「早く言いなさい。」
「それ…直腸体温計…」
「ゴフィッ!」
ジェイドは体温計を噴き出した。
「…汚いなあ…」
「…こっちのセリフでしょう…」
ちゃんと洗ったのに、と呟いて体温計を拾い、布で拭うルーク。
そして、ルークはマスクを装備して白衣を着る。
「口開けて。」
ルークは金属の棒を取り出す。
「もう嫌です。」
なんですかその装備は…?…お医者さんごっこですか?
「大丈夫、これは舌圧子。喉の奥を診るための道具。…ちゃんと消毒してある。」
説明不足だと思ったのか、ルークは金属の棒について説明する。ジェイドはしぶしぶ口を開けた。
舌圧子というらしい金属の棒を口の中に入れ、ルークはペンライトで喉の奥を見る。舌圧子を抜くと、ルークは感想を述べた。
「化膿してるな…」
思ったよりひどい、とルーク。
「…ルゴールとか塗ったりするんですか?」
「…一昔前はね…今は抗生剤と…」
ルークはジェイドに錠剤を渡す。用意された吸い飲みでジェイドはおとなしく薬を飲み込んだ。
「…それは?」
ルークが取り出したのは…
「抗生剤の点滴。セファメジンピギー。」
ジェイドは眉を寄せる。
「…待ちなさい。点滴を打つには看護師免許か医師免許が…」
「おれは医師免許持ってる。脳外科と心臓外科と小児科。」
…内科は?というか七年間軟禁されていたのでは?
「…グサッとくるから。」
「…そこは「ちょつとチクッとしますからね」…では?」
「チクッとだとおもっていたのにグサッとくるよりましだろ?」
「…まあ…」
ルークはジェイドの手袋を取って袖を捲り、駆血帯で縛ると翼状針を腕に刺した。…グサッとは来なかった。
ルークは慣れた手つきで翼状針をテープで固定する。
「ついでに採血もしたから。」
「はぁ…」
ジェイドの血管はやりやすくて助かるよ、と言ってルークはジェイドの額に手を当てる。
「…なにをしているんですか…?」
「…三十九度二分…やっぱ熱高いな…」「…ルーク…」
「なに?」
「手で体温が測れるんですか?」
「うん。…積み重ねで得たスキルかな。」
「…それでは体温計は要らなかったのでは…」
ルークは今気付いたような顔をする。
「要らなかったかもしれないな。」
ジェイドは体調管理を怠った自分を呪った。


部屋から出て行ったルークは、小さな鍋を手に戻ってきた。なかには卵粥。
「…ルークが作ってくれたんですか?」
風邪が悪化しないといいですねぇ、と嫌味を言うジェイド。
「…ほら、口開けろ。」
「…火傷したらどうするんですか?ふーふーしてくれないんですか?」
ルークは眉を寄せる。
「そんなことしたらキタナイだろ?…大丈夫、温度計で測ってきっちり三十七度。」
いらないところに神経質だな、と思いながらジェイドは口を開ける。
「………」
「どう…?」
…昆布の出汁がきいていておいしい。
「…食べられますね」
そうか、と嫌味にもそっけないルーク。「あ…そうだ…」
ぺたっ。
「………」
ルークは冷えピタをジェイドの額に貼る。
「愛が感じられない…」
「…なにか?」
「いえ…」
「じゃあ…熱冷ましを入れようか。」
ルークが自分の鞄を漁る。
「…かしてください」
ジェイドが手を出す。だが、
「いや、コレ座薬だから。」
ジェイドの顔がさあっと蒼くなった。
「…結構です。今の状態に満足しています…!」
「まあまあ、遠慮せずに…」
冗談ではない!ジェイドは軋む身体に鞭打ってベッドから逃れようとする−−が、
ぎしっ。
「……なんですかこれは…?」
気がつけば、両手両足の自由を奪う皮のベルト。
「なにって……拘束具?」
にこぉ、と笑うルーク。笑顔が怖すぎる。
「さーて…脱がすか!」
「あなたは…私になにか恨みでも…?」
まさか、とルーク。
「おれは…初めてジェイドに遭ったとき世間知らずのおぼっちゃまと見下されたこととか、親の七光りって言われたこととか見捨てられたこととか全然気にしてねーから…」
うらんでんじゃねーか!
深い深い恨みがルークの瞳に狂気を孕ませる。
「ちょっと…待ちなさい…ッ!」
ずるり、と下着ごとずりおろされる。冷たい外気に晒されるいたいけなゾウさん。
「………」
ルークはジェイドの股間を凝視する。…そして、
「だいじょうぶ、短小でも生きていけるさ!」
優しく微笑むルーク。…いつかコロス…ずぶり、と挿入される座薬。独特の感触に顔を歪めた。


「…血中コレステロールがちょっと高いな…でもヘマトクリット値は正常…と…」
血液検査の結果を読むルーク。
「あの…」
「ん?」
「トイレに…行きたい…です…外してください…」
ぎし、と拘束具をならすジェイド。ルークはちょっと思案したあと、
「…尿瓶…」
独特の形をした硝子の瓶を見てジェイドの顔色が無くなる。
「冗談ではない…!外しなさいッッ!」
「はい、もっかい脱がすよ〜…」

「やめろ…!やめろやめろやめてくれつまむなあああああぁぁぁ!」




−−次の日、ジェイドの熱は綺麗さっぱり無くなった。
だが、
「…なんか…大佐沈んでない?もう熱ないのに…」
「確かに…気持ち悪いくらいおとなしいですわ…」
アニスとナタリアがひそひそと声を交わす。
「旦那…いつもみたく嫌味言わないなぁ…」
心配するガイ。
「ジェイド」
声をかけられてびくりと振り向くと、そこにはイオンがいた。
「イオン様…」
「熱、下がったみたいですね。ルークが看病してくれたんでしょう?」
ジェイドは口を閉ざす。黙秘したい。
「お粥とか作ってくれたでしょう?僕も看病してもらったことあるんですよ」
…確かにお粥は作ってくれた。ジェイドはイオンもあの看護を受けたのか、と少し仲間意識を感じた…が、
「氷水に浸したタオルをこまめに代えてくれて…バニラアイスを作ってくれたり…僕の要望に応えて…顔を真っ赤にしながらナース服で献身的に看護してくれて…」
くふふ、と思い出し笑いするイオン。…扱いが違いやしないか。
「ああ…また風邪ひきたいなぁ…」

…私は絶対もう二度と、一生、風邪なんてひきたくない。




end.

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あきゅろす。
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