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鐘撞き堂
王様あそび ルーク総受け。ギャグ
「あ〜暇だ・・・」
金の髪に紺碧の瞳を持つ第九第マルクト皇帝ピオニー・ウパラ・マルクト(三十七歳独身)は執務室で呟いた。
机の上に積まれる未処理の書類。どっからどうみても暇ではない。
「・・・よし!愛しいルークを呼んで遊ぼう!」
王は勝手にそう決断し、伝書鷹を飛ばした。
「お久しぶりです、ピオニー陛下。懐かしきご尊顔を賜り誠にこうえ・・・」
「ルウゥクゥー!来てくれたのは嬉しいが堅っ苦しいぞ!」 「ぐぇっ。」
ラリアットをぶちかますがごとくルークにだきついたピオニー。ルークは苦しそうだ。
「このク・・・陛下、ルークの首をへし折らないでくださいね。」
イオンがにっこりと微笑む。
「・・・導師イオン、今クソなんとかとか言おうとしなかったか?」
「まさか。」
イオンあくまでも穏やかな微笑みを向ける。
「まったく・・・私達は暇ではないのですよ?」
ジェイドが指で眼鏡をおしあげる。
「はっはっは!実は暇だから来たんだろう?」
ピオニーが豪快に笑う。
「暇と言われれば暇かもな・・・」と、ガイ。
「暇ですわ。」
「暇ですの。」
ナタリアとミュウも右に同じな科白。
「はいは〜い!暇を持て余してまーっす☆」
アニスが楽しそうに挙手する。ティアは不本意そうだ。
「そうかそうかぁ〜!暇か!じゃあ、ルーク、何して遊ぶか考えてくれ!」
「え・・・おれが?」
ルークは自分を指差して目を丸くする。
「おう!おまえがきめてくれたやつなら、なんでもいいぞ!」
ルークは顎に手を当ててう〜ん、と唸る。
「知ってはいるけどやったことない遊びでもいいですか?」
「おう!いいぞ。そっちのほうがたのしそうだ!」
じゃあ、とルークが微笑む。
「王様ゲーム!」
「王様ゲームぅ?!」
アニスが思わず繰り返す。
「ナウなヤングにばかウケな遊びらしいですよ。」
「ルーク…科白がすでにヤングではないのですが…」
イオンが生温かい微笑みを向ける。
「っていうより…本物の王様を混ぜて王様ゲームってどうよ…」
ガイは苦笑い。
「王様ゲームとはどういった遊びですの?」
ナタリアが首を傾げる。
「籤を作って王様の役になった人が三日三晩書類の整理をやるというハードな遊びです。」
「ハードですの…」
ミュウがおろおろする。
「可愛くない方のジェイド!嘘を教えるんじゃねぇ!そんな遊びじゃなかっただろ!」
「…どうでしょう?」
提案したルークがピオニーを窺う。
「面白いじゃねぇか!やろう!」
「どこでですか?」
「俺の私室だ!」
「あの豚箱で?」
イオンが微笑んだままとう。
「…くっ…随分な言い草だな導師イオン…俺の部屋は刑務所かよ…」
「薄汚くて家畜臭いという意味で言ったのですが?」
「なお悪いわ!」
…こうして、ルーク達はピオニーの私室に集まった。
「籤、できたぞ。特別製だ!」
満足そうに笑ったルークのてには、厚紙で作った籤の束が握られている。
「まず、引いてみてくれよ!」
ルークが籤をさしだすと、みんなが籤を引いた。
「あら…なにか書いてありますわ…ええと…「王女」?」
「俺のは「伯爵」ってあるぞ」
「あたしのは「導師守護役」!」
「僕のは「導師」です」
「私は「大佐」ですか…」
「私のは「響長」だわ。」
「ミュウのは「チーグル」って書いてありますの!」
「そんで…俺のが「王様」…」
ピオニーは自分の籤をひらひらと振る。
「面白いかとおもって、番号じゃなく役割を振ってみました…でもそれぞれにぴったり行き渡るなんて…」
奇跡的だ、とルーク。
「ふーん…いいじゃねぇか、面白そうで。…ルークは何なんだ?」
「おれは「公爵子息」です。」
「そして私が「少将」というわけですね。」
そこには、当たり前のように輪に加わっている、アスラン・フリングス少将がいた。
「アッ…!アスラーン!!お前いつからここにッ!」
「やだなぁ、ずっと居ましたよ陛下…」
ふふふ、と黒いオーラを纏いながらピオニーを見下ろし笑うフリングス。
「そうですよ。アスランは最初からいました。」
だから「少将」の籤も作ったんだ、と、ルーク。
「…捜しましたよ?…山積みの仕事を放り出してどこかに行ってしまうんですから…」
「仕事、山積みなのか?…ピオニー宣わく「暇だから遊びに来い」…とあったんだけど…」
変だな?と首を傾げるルーク。
「そうですか…暇ですか…それはよかった…」
もうすでに眼がやばいフリングスが、ピオニーの首根っこを掴んで引き摺っていこうとする。
「ま…待てッ!落ち着けアスラン!話せばわかる!」
「仕事が終わってから聞きましょう。」
「ルークが…!ルークが折角籤をつくってくれたんだぞ!お前の分もっ!」
ピオニーは必死だ。
フリングスはちら、とルークを見る。
「アスラン…」
ルークは子犬のような眼でうるうると自分を見上げていた。
「う…」
揺らぐ理性。
ルークはじっとフリングスを見つめる。
「遊んだらちゃんと仕事してくださいね…」
なけなしの理性が崩れた。フリングスはルークの隣に腰を下ろす。
「さっすがアスラン!」
ルークのおねだりを無碍にするやつは男じゃねぇぜ!とピオニーはガッツポーズ。
「じゃあ、一旦籤を回収するな。」
ルークはみんなの籤を回収する。
「不正が無いように、籤を持つ人はおれから順番に時計回りってことで…じゃあ、引いてくれ。」
皆が再び籤を引く。ルークは自分の手の中に余った籤をみた。
「あ…おれ王様だ…!」
「やったなルーク!「のこりものには福がある」ってやつか?」
「命令してくださいルーク!」
イオンはにこにこと楽しそうだ。
「えっと…じゃあ、公爵子息は導師を背中に乗せて腕立て伏せ二十回!」
「いきなり体力使うやつだな…」
はは…とガイが苦笑する。
「じゃあみんな籤を見るぞっ!」
ピオニーの掛け声で一斉に手を開く。
「あ、導師僕です!」
イオンが手を挙げる。
「また導師ですかイオン様〜☆…公爵子息は誰ですかぁ?」
「わ…私…」
ティアがおずおずと手を挙げる。
それをみて、
「がんばってねティア☆」
「頑張ってくださいティア。」
応援するアニスとジェイド。
「え…」
ティアが「止めてくれないの?」といった顔をする。助けを求めるようにガイとナタリアを見た。
ガイは目をそらす。ナタリアは、
「ティア、こんな諺があります…「ペンは剣よりも強し、されど導師の体重は大佐や伯爵よりも軽し」…」
励ましているつもりなのか、なんなのか。
ガイは、明らかに今作っただろ・・・と呟く。
「はあ…はあっ…!にじゅ…うッ!」
イオンを乗せて腕立て伏せ二十回をクリアしたティアは、ぼて、と床に倒れる。
「お疲れ様ですティア。」
にこにこと労うイオン。なかなかティアの背中からどかない。
「次はイオンが籤持ちだな。」
ルークはイオンに籤を渡す。
「では、皆さん引いてください!」
イオンが差し出した籤を皆それぞれ引く。イオンは自分の手の中の籤を見た。
「あ、僕王様です!」
「籤持ちが王様になる確率高いのか…?」
ピオニーが首を捻る。
「命令お願いしますイオン様!」
「では…公爵子息は響長を背中に乗せて腕立て伏せ三十回!」
「さっきよりハードですの…!」
ミュウが固唾を呑む。
「やっぱりハードなゲームなんじゃないですか?」
ジェイドは肩をすくめる。
「ではまず…響長は誰ですかぁ?」
アニスがくりん、と見渡す。
「あ、俺だ。」
ガイが手を挙げる。
「よりによってパーティーメンバー中一番重い奴…」しんどそう…とアニス。
「公爵子息はだれですの?」
ナタリアはわくわくしている。誰も手を挙げない。
「まさか…」
フリングスがティアを見る。ティアは青い顔をして震えていた。
「ご愁傷様〜☆」
きゃは☆と、アニスが笑う。
「なんで…誰もとめてくれないの…?…と言うより軍人である響長が公爵子息を働かせるなんて、おかしいわ!」
それを聞いたイオン、ジェイド、アニス、ナタリア、ミュウが肩を竦める。
「…嫌だなぁティア、貴女は公爵子息であるルークを前線で戦わせたじゃないですか…」
「そうですよ…私と一緒にルークを盾にしてこき使ったじゃないですかぁ…」
お前そんなことしてたのか?!とピオニーはジェイドを見る。フリングスはジェイドをじろり、と睨んだ。
「それにぃ、コレ、そういうゲームだしぃ…」
「そうですわ。籤で決まったのです。文句は言いっこなしですわ!」
うんうん、とアニスとナタリアが頷き合う。
「………く…!」
ティアは唇を噛む。
…仕返し…?…仕返しなの…?…絶対導師は分かってて命令したわ!
そして、罪もないガイをぎろりと睨んだ。
「…害…恨むわ…!このデブ…!」
ガイは怯む。
「そんな…パーティーメンバーの中で一番重いってだけでデブだなんて…!しかも名前が無駄に漢字変換されてるし…泣くぞ俺…」
そして、三十回の腕立て伏せが終わる。ティアは動かない。ただのしかばねのようだ。
「次はガイですね。」
イオンはガイに籤を渡す。
「よしっ!こい!王様の籤!」
皆が籤を引き終わると、ガイはそっと手を開く。
「ありゃ…チーグルか…」
ガイは残念そうに頭をかいた。
「ガイさんはチーグルですのっ?!お揃いですの♪」
「では王様は…」
フリングスが見渡す。
「よっしゃあ!俺王様ッ!」
ピオニーがガッツポーズ。
「よかったですねぇ陛下…初めて王様になれて……」
「可愛くない方のジェイドは本ッッ当に可愛くないな!俺は普段王様だ!語弊を招く言い方するな!」
「命令は何にするんですか?」
イオンがとう。
「そうだな…ここらで一つ明るく歌でも聴きたい…ってことで、王女は自分の持ち歌を歌う!」
「王女は誰ですの?」
「あ、おれだ…」
ルークがおずおずと手を挙げる。
「いいねぇ!ルークの歌かぁ!」
「−ヴァ ネゥ ヴァ レィ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ−」
「まてえええぇい!それユリアの譜歌だろ?!しかもジャッジメント!こんなところで発動させるな!譜歌はヤメロ!」
ルークの破壊工作はすんでのところでガイにとめられた。
「ルーク…俺…普通の歌がいいな…」
ルークはピオニーの言葉に、仕方ないか、と呟く。
「ルーク、得意な歌の歌い手とかいますか?」
イオンの問いに、ルークはちょっと考えを巡らせる。
「…手●葵さんか、クレイジー●ンバンド…」
「すごい二択ですね…」
「では、間を取ってエウ゛ァン●リオンの「残酷な天使の●ーゼ」を…」
ジェイドがちゃっかりリクエスト。どこが間なんですか…と呆れるフリングス。ルークは困ったように俯く。
「おれ…エヴァ●ゲリオンなんて知らない…だから…こういう時、どんな顔をしていいかわからないの…」
イオンはルークに微笑みかける。
「僕も知りません…でも…笑えばいいんだと思うよ…」
微笑み合う二人。
「…おまえら…絶対知ってるだろ…」
結局、ルークは「残酷な天使の●ーゼ」を熱唱した。

「次はナタリアだな。」
ガイがナタリアに籤を渡す。
「皆さん引いてくださいませ。」
皆が引き終わると、そっと手のひらを開く。
「いやー困りましたねぇ…私が王様ですか…」
ジェイドが肩をすくめる。
「…嬉しそうだな旦那…」
「では…ルークは私にちゅーです!」
「こらぁー!ちゃんと役名でやってよぉー!」
アニスが憤慨する。
「そうですよ。指名できたらやりたい放題じゃないですか!(万が一にもジェイドとルークがキスなんてことになったら全力で阻止しますけどね!)」
「やれやれ、怒られてしまいました…ここはリスクもあることですし…そうですね…チーグル役の人は私の肩もみ五分です!」
「じゃ!チーグルの人名乗り出てくださあい☆」
ピオニーは固まっていた。

「ピオニーさんもチーグルですの?!お揃いですの〜!」
嬉しそうなミュウ。「く…屈辱だ…」
「ほらほら、もっと力入れて揉んでくださいチーグルさん!」
「誰がだ!」
「王様にそんな口をきくなんて…不敬罪で営倉入りですよぉ〜?」
「クソ…いつか営倉入りさせてやる…!」

「次は大佐ですわね。」
ナタリアがジェイドに籤を渡す。
「皆さん引き終わりましたね。」
「王様誰だ?」
「や…」
「や?」
アニスがナタリアを窺う。
「やりましたわッッ!わたくしが王様ですわ〜!」
「ナタリアなに命令するんだ?」
ルークが楽しそうに聞く。
「ええと…ここは思い切って…!」
「思い切って?」
「導師と導師守護役の主従、決闘ですわー!」
「ええー!なんで導師とその守護役がけっとぉ??」
アニスが驚きの声を上げる。
「別に珍しくないことでしょう?僕は常日頃からアニスをこてんぱんにのめしたいと思っていたところなんです。」
イオンがにっこりと微笑む。
「返り討ちにしますよ…っていうか、導師守護役あたしじゃないですけどぉ…」
「あ…私です…」
フリングスが控えめに手を挙げる。
「導師は誰なんですか?」
「おれ…」
手を挙げたのはルーク。
「と…トンデモにゃいデスッ!!」
「あ、アスランが噛んだ…」
「噛みましたねぇ…」
他人事のように見つめるピオニーとジェイド。
「そんな…ルークさんにてをあげるだなんて!」
フリングスは頭を抱える。
「ほかの奴ならいいって言っているように聞こえます…」
「あたしも…」
ルークがフリングスの頭を優しく撫でる。
「しょうがないよ、命令だし。闘おう、アスラン。」
「ルークさん…」
ルークとフリングスが中庭に出る。
「ルークを傷つけたら…許しませんわ…」
睨むナタリア。他全員。(ティア除く。)「わ…分かっています!」
命令したのナタリア殿下なのに…
フリングスは構えるルークを窺う。
「だいじょぶだって!そんな心配そうな顔しないでください!おれだって合気道くらいはできますから!」
にこ、と笑うルーク。
「はあ…」
フリングスは心配そうだ。
「いきますよ!」
そう言うと、ルークはフリングスに肉薄し、素早いパンチを繰り出す。
「てぇいっ!」
ぱしん!とフリングスがルークの拳をガードする。

−グキ。

「……ぐき…?」
次の瞬間ルークは手首を押さえてうずくまった。
「いひゃい…」
「自滅しましたね…」
ジェイドがくい、と眼鏡を上げる。
「だ…だいじょうぶですかルー…」
おたおたするフリングス。ルークの目が光る。
「−隙あり!無慈悲なる白銀の抱擁!アブソリュート!」
「わぁ?!」
フリングスが慌てて地面から生える氷の針を避ける。
「敵の心配などしないことですっ!…天光の満つるところに我は在り、滅びの門、開くところに汝在り、出でよ、神の雷!」
ルークが後方へ跳躍して距離をとる。
「…インディグネイション!」
ずどおおおおおおん!
「あっぶなああああぁい!」
フリングスはギリギリのところで紫電をかわした。蒼い軍服の裾が焦げる。
「無数の流星よ…彼の地より来たれ!メテオスォーム!」
物凄いスピードで落ちてくる隕石が庭を破壊する。
どががが゛ーん!
「こ…降参っ!降参させてくださいッ!」
「そこまで!勝者、導師ルーク!」
「次はピオニー陛下ですわね。」
「おう!任せろ!」
ピオニーはナタリアから籤を受け取る。みんなが籤を引き終わる。
「やあっとぅああ!アニスちゃん王様ぁ〜!」
アニスが立ち上がってガッツポーズ。
「よかったなアニス!…命令は…?」
アニスがふふん、と不敵に笑う。
「大佐と少将がポッキーゲームッ!王様ゲームといえばやっぱこれっしょ!」
アニスがびしぃ、と親指を立てる。
「大佐と少将は誰ですの?」
ナタリアが見渡す。ピオニーとジェイドが固まっていた。

「………」
「………」
ポッキーを口にくわえ睨み合う三十台も半ばのおっさん二人。
「見苦しいことこのうえないねー…」
肩を竦めるアニス。「なら撤回してくれ!」
ピオニーは涙目だ。
「イ・ヤ
にっこりと微笑んで残酷に拒否。
「さ、ちゃっちゃと食べちゃってください!」
イオンががし、とふたりの後頭部を鷲掴みにする。
「や…やめろおおおお!」
ポッキーはポキッと儚い音を立てて砕け散った。
ぶちゅ。
「…お味はいかが?」
アニスが口元を押さえてけくずおれる二人を窺う。
「…人としての何かを無くした気がする(します)…」
「ルーク!二人はらぶらぶだったんですよ!(敵がへりましたね!)」
「そうだったのか…」
ルークが納得する。
「誤解だああああ!(泣)」


「次はペチャパイ…お前だな…」
「ブッ殺すよ…?逆恨みしないでよね!」
アニスがピオニーから籤をもぎ取る。
「はい、みんな引いて引いてー!」
皆が籤を引き終わる。
「王様は誰ですか?」
「みゅみゅみゅう〜!ミュウですのっ!」
「よかったですねミュウ。」
イオンか゛微笑む。
「ミュウはご主人様ときすがしたいですの!」
「ミュウ…?役名で言わないとだめなんですよ?」
イオンがやんわりと注意する。
「みゅう〜…じゃあ、公爵子息は王様とキスですのっ!」
「思い切った命令だなぁ…」
「チーグルだからこそ出来る命令ですわ…」
ガイとナタリアが感心する。
「公爵子息だれ?」
アニスが見渡す。
「おれ…」
ルークが頬を赤らめて手を挙げた。
「大当たりかよ?!」
「みゅうう〜!やったでーすーの!」
イオンの微笑みが引きつる。
「ご主人様、目を閉じてくださいですの!」
ぴょこん、とミュウは体育座りをしているルークの膝に飛び乗った。
「お…おう…」
ルークはそっと目を閉じる。
ちゅっ。
「…ご主人様の唇、柔らかいですの…」
「く…なんてうらやましい…」
ピオニーが拳を握り締める。
「ちょっとお口あけてくださいですの。」
「…ん」
ルークはミュウに言われた通りに口を少し開く。獣特有のざらついた舌が口の中に滑り込んだ。
くちゅ。ちゅく。
「みゅ…う…くるし…っ…」
「お鼻で息をするですの!」
涙で潤んだ瞳、紅潮した頬。
「はぁ…ん…」
「これは…色っぽいですね…」
ジェイドが正直な感想を漏らす。ガイもルークの表情にごくり、と喉を鳴らす。
溢れた唾液がルークの口端を伝う。
「長いいいいッ!」
痺れを切らしたイオンのカットが入った。
「みゅう…残念ですの…おしまいですの。」
ミュウは名残惜しそうに唇を離した。

「ティアはへたばってるし…次はミュウだねっ!」
「がんばりますの!」
ミュウが自分の体に比べると抱えるのがやっとな籤を受け取った。よろよろするのでみんな素早く引いた。
「王様は誰だッ?!」
「あ…私ですね…」
何を命令したらいいんでしょう?と首を捻るフリングスの肩をルークがつんつんとつつく。
「なんでしょうルークさん…?」
「アスラン…王様はなんでも命令できるんだ…例えば、少将を三日三晩働かせたり…」
ルークがフリングスの耳元でぼそぼそと囁く。フリングスは目を丸くしてルークを見る。
「…わかりました…私は…ルークさんを信じます!」
フリングスは決意する。
「−少将の役の人はこのゲームが終わり次第、三日三晩休まず仕事をして貰います!」
「ハードですね…しかも、思い切った命令だ…まるで少将役の人が仕事を溜めていることを見越しているような…」
イオンはちらり、とピオニーを見た。
「燃え尽きたぜ…真っ白に…」
ピオニーは朽ち果てていた。
「ありがとうルークさん…あなたを信じて…よかった…」

「次はフリングスさんですの!」
「ありがとうございます。」
ミュウがよたよたと籤を渡す。
「これまで皆に平等に王様が行き渡っていますわ…この分では…」
「よっしゃあ!やっとガイ様華麗に参上!」
ナタリアが言い終わらないうちに、ガイがガッツポーズした。
「なにを命令するんですの?」
ミュウが楽しそうに聞く。
「えっと…じゃあ、月並みだけれど…伯爵は自分の好きなタイプを言う!」
「ガイ…聞きたいのはルークの好みでしょう?」
「う…鋭いなイオン…」
ガイが頭をがりがりと掻く。
「でもみんなも知りたいだろ…?」
「うんうん!知りたーい!」
「聞きたいですの!」
アニスとミュウが賛同する。
「でもまだルークが伯爵と決まった訳では…」
「…ごめん…引いちゃった…」
「ルークは期待を裏切りませんわね…」
ナタリアが口元に手を当ててくすくすと笑う。
「先ず…年下と年上、どっちが好きだ?」
「えっと…年上…かな…」
「イオン様脱落ですねぇ〜♪」
イオンはアニスを恨めしそうに睨む。
「背は、高い方がスキ?小柄な方がスキ?」
「高めの背の人かな。」
「う゛〜っ…」
アニスは肩を落とす。ミュウもがっくり。
「脱落ですねアニス。」
「外見的な特徴などは…?」
「えっと…綺麗な金髪の人かな…」
ナタリアとガイとピオニーが固唾を呑む。フリングスは悲しそうだ。
「あと…蒼い瞳っていいな…」
ガイとピオニーが顔を輝かせる。ナタリアは悔しそう。
「性格は…」
ルークはにっこりと笑って、
「クールなひと!」
「………」
「………」
ガイとピオニーは沈黙する。
「なあ…俺…クールかな…?」
ガイがアニスに聞く。
「クールとは言い難いんじゃない?」
肩を竦めるアニス。
「気障ではありますけど…」
ナタリアも肩を竦める。
「なあ、俺は…?」
「有り得ません。」
「有り得ませんね。」
ピオニーはフリングスとジェイドにすっぱり斬られた。
「…ルークの条件を全てクリアするひとが一人だけいますよ。」
「誰だっ(です)(ですの)(なの)?!」
イオンの言葉に皆が振り返る。
「…六神将、「魔弾のリグレット」です…」
「あ…」
皆の空気が凍りついた。


「なぁなぁ!ジゼル、アイスクリーム!」
「ふふ…仕方がないな…奢ってあげよう。」
「やた!」
ルークは嬉しそうにばんざいする。
「苺練乳アイスうめー!」
「ふふ…ルークは可愛いな…」
リグレットは優しくルークの頭を撫でる。
「半分こしよーぜ!」
「おいしいな…」

その後、風の噂により、楽しそうにデートするルークとリグレットの姿が見られたとか見られてないとか…

「なんで…俺だけこうなるんだああああああぁ!」
そして、ピオニーは約束を律儀に守って(守らされて)三日三晩仕事漬けになった。


end.

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