short story
川嶋くんの狂愛喜劇シリーズ02『突き落とす』
「……あ?」
自分が知る限り、出来事といえるものはいつも唐突で、とてもじゃないけど喋る暇なんてないわけだ。
だから許してほしい。
自分がちゃんとした言葉を話すのが、出来事の後であっても。
ガタッゴト ガ―――ッ…
【特急が通過しました】
「…あれ、今人が線路に落ちなかった?」
一人がぽつりと呟いた。
しかし、朝のラッシュというのは人を冷酷にさせる。
「無関心、自己中心……はたまた加虐心か」
あ、最後のは俺のか。
「……てめぇ」
「あっは!何で死なないかな?」
三秒もなかったと思うのになぁ…なんでかなぁ?
川嶋くん。
「んなこたぁどうでもいいんだよ…今すぐ死ねや、加倉崎ィィ!!」
「突き落とすって行為は実は結構勇気がいるんだよ?」
「あ゛ぁ?」
「まぁ、俺も今日始めて体験したわけだけど、正直手が震えたよ。」
「・・・・・・」
カンカンカンカン
【電車が参ります。白線の内側に―――】
「・・・早く上がっておいでよ。この時間は両線路から来るよ?」
「知っててやってんだろ、てめぇはよ」
「もちろん!ほら、見てよ。まだ手が震えてる!」
「・・・・・・・・・」
「君を殺すのがこんなに興奮することだったなんて!!」
(知りたくもなかったよね!!)
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