[携帯モード] [URL送信]

Alice's Watch



「では聞きますが、アリス様がその血を纏った時、傍に誰かいませんでしたか?」


思いもしない質問にアリスは目を開く。

あの時誰かがいたか?

分かるはずもない。

一瞬だった。

屋敷も、人々も、そして自分も、赤く染まったのは・・・。


「・・・分からない。ただ、気づいたらあの屋敷にいて、気づいたらあの部屋にいた。」


あの部屋とは、さっきまでいた縫いぐるみだらけの部屋。

そうだ。

気づいたら“ドール”と呼ばれてた。


「だとしたら、アリス様は嵌められたようですね。」


・・・嵌められた?

アリスは俯いた。

私が嵌められる?

誰に、一体何のために・・・・。


「もう一度聞きますが、周りには誰もいませんでしたか?」


二回目の問いに、はっとする。

いた。

それはそれは天使のように笑う女の子が。

ぞっとするほど、血を愛しそうに眺める天使が。


「・・・・・・ふむ。なるほど。その少女が、おそらく猫。」


アリスの話を聞くと、何やら納得したように呟いた。

だから最後の方はアリスに聞こえなかった。

アリスもアリスで、うとうとしていて、とても眠そうである。

そんな中、シトはアリスを見ると、今までとは考えられないほどの低い声で呟いた。


「ただでさえ、汚らわしいものをアリスに付けたんだ。その上記憶まで奪って、これ以上何をしようとしてる。」


分かっていた。

あの部屋で、あのタイミングでアリスに逢えたのは、あいつの計算の内であることくらい。

本当なら、有り得ない話ですからね。

今、私の目の前に、彼女がいるなんて・・・。

まぁ、何も覚えてはいないみたいですけどね。


「アリス様。お疲れですか?でしたら、お眠り下さい。私がお傍におりますから。」


さらさらの金色の髪を撫でれば、アリスは深い眠りに目を閉じる。

本当は、もっと説明するつもりだったのだが、それはまた次でいい。

アリスは今、私の腕の中にいる。

やっと逢えたんだ。

もう、離さない。


「次、アリスに手を出せば、殺す。―――――――チェシャ猫」


シトは再びアリスを抱え、教会を後にした。






end


第2話 〜誓いは神の名の下に〜
 

[BACK][NEXT]

5/63ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!