Alice's Watch
2
「“ドール”今日もちゃんとこなして来た?」
「・・・・・・・・」
それはそれは小さな女の子は、その天使のような笑顔とは裏腹に、冷たい口調で語りかける。
“ドール”、その名の通り人形の意。
世界の財閥が子息子女を守るために作られたもの。
それを人々は“ドール”と称した。
もっとも、彼らが生きていることには変わりはないのだが・・・。
人々はいつしかそれを、“ドール”として、人形として扱っていた。
「あぁ、喋ってもいいよ?もっとも、その姿を見れば分かるけどね。」
女の子は愛しそうにそれを見つめる。
「ふふ、本当にやってくれたんだ?僕の愛しい“ドール”。」
女の子はそれを拭う。
それが月の光に当たれば、妖しい光を放つ。
それは女の子の目の色と酷似していた。
「僕の愛しい“ドール”。僕のお人形・・・・」
その時の女の子の顔は、とても美しい天使の表情。
殺戮の天使―――――――――――。
「明日も頑張ってね。お人形さん。」
女の子は濡れた手を“ドール”の服で拭くと、そこから消えて行った。
それから夜の沈黙が、只管狭い空間に広がる。
すると“ドール”は思い出す。
女の子はまだ解除したままだ。
“喋る”ことを。
一人と言う中、静寂仕切った空間で、ただゆっくりと口を開く。
「・・・・・・真っ赤」
ふと、月明かりに照らされた自分の服を見る。
元から赤い色だった服にべっとりと付着するもの。
奥にある大きな鏡を見れば、服だけでなく、自分の顔までもが染まっている。
それをしばらく見つめていた。
目の前に少し前の光景が浮かび上がる。
それは真っ白で大きな屋敷の出来事。
その日は、賑やかだった。
だって誰かの誕生日だったから。
真っ白な中に、とても輝いていた人々の笑顔。
上を見上げれば、眩しく輝くシャンデリア。
辺りを見渡せば、沢山のごちそう。
そこはまさに理想のお城。
でも、それは少し前までのこと。
その理想もたった一つのものに壊される。
絶えず輝いていた光は、闇に飲み込まれたのだ。
一瞬で真っ白なお城は、真っ赤になる。
もう、そこにいた人たちの、顔も思い出せない。
一瞬だったから、記憶に焼き付ける暇もなかった。
いや、自分は、目を瞑っていたのかもしれない。
血が、目の中に入って来たら面倒だから。
そう
すべては私がした事――――――――――――――――
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