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Alice's Watch



「!!え、今、私の手に・・・・・」


「誓いの証ですよ。我が主、アリス・ミラージュ。すべては貴女様の、仰せのままに――――――」


そう言うと、シトはそっとアリスの手を離し、自ら頭を伏せた。

アリスは少し緊張気味に、手を伸ばす。

指先がそれに触れると、それはぴくっと反応した。

アリスは何だか嬉しくなって、それに手を滑らせた。

それはとても白くて、軟らかかった。


「不思議、まるで別の生き物みたい・・・・。」


「・・・・っ・・・アリス様、申し訳ありませんが・・・・そろそろ、限界・・っ・・」


「アリス!アリス!手ぇ、貸してっ」


何時復活したのか、アスは言うよりも早くアリスの手を掴んで自分へと引き寄せた。

アリスは急なことに倒れ込みそうになり、慌てて体勢を整えようとする中、またしても手の甲に軟らかいものが当たる。

二度の驚きに、アリスは体勢を整えることをすっかり忘れ、そのままアスの胸に飛び込んでしまった。


「アリス、大胆だな〜。あははははは、可愛い!ちっさい!!」


「ぇ、と・・・・・その・・・・あ、あの・・・」


何をどう突っ込めばいいのか分からなくなって、アリスは混乱した。

その内にも、不意に出てしまったものを仕舞い込んで、シトがふらふらと立ち上がった。

アスはまだアリスを抱きこんで堪能している。


「・・・・そこの変態、先程アリス様に何をしました・・・・」


「あ、シトくんじゃん。てゆか、君に変態呼ばわりされたくないんですけど。」


ここでいつもはお茶らけているアスが、シト相手に強気に出た。

微かにシトの髪が、逆立った・・・・ように見えた。


「ほぉ、それは是非聞きたいですね。理由を。」


「だって君、アリスに名前呼ばれたくらいで耳出したでしょ。しかも何?ただでさえ敏感な耳を、アリスに触ってもらえたからって、いつになく気持ち良さそうだったじゃん。シトくんのエッチ―!変態―!!」


そこで突然、シトから放出されていた殺気が消えた。

アスは愚か、アリスまで驚いている。


「・・・・・・・・・・シト?」


「あ、あれれ?もしかして、シトくん・・・・・・・泣いてる?」


瞬間鋭いものがアスの頬を掠める。

掠めたものはそのまま壁へと激突すると、ぽとりと落ちた。

アスの頬から生々しい血が流れる。
だが、アスもアリスもただシトを見ていた。

シトは微かに微笑んだ。

とても辛そうに・・・・・・


「すみません・・・・・・当てる、つもりは・・・なかったのですが、手元が、くるっ・・・て―――――――」


「!!!?―――――シトっ!」


月明かりでも分かる青が、ゆっくりと音もなく闇に吸い込まれていく。

だんだんと見えなくなるその姿は、まるで、彼自身が影であるかのように思わせた。

夜は嫌い、皆消えてしまうから。

そう、夜の世界はどうしても人を惑わし、喰らう。

でも私は、倒れていくシトを、ただ見ているだけだった。

壁に当たってそのまま落ちたグリフも、垂れ流しながら走って床に付いてしまった血も、全てが異常だと思った。



でも私は、そう、彼に魅せられていたのだ―――――――――






end


第6話 〜闇は人を惑わし、喰らう〜
 

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