Alice's Watch
4
「!!え、今、私の手に・・・・・」
「誓いの証ですよ。我が主、アリス・ミラージュ。すべては貴女様の、仰せのままに――――――」
そう言うと、シトはそっとアリスの手を離し、自ら頭を伏せた。
アリスは少し緊張気味に、手を伸ばす。
指先がそれに触れると、それはぴくっと反応した。
アリスは何だか嬉しくなって、それに手を滑らせた。
それはとても白くて、軟らかかった。
「不思議、まるで別の生き物みたい・・・・。」
「・・・・っ・・・アリス様、申し訳ありませんが・・・・そろそろ、限界・・っ・・」
「アリス!アリス!手ぇ、貸してっ」
何時復活したのか、アスは言うよりも早くアリスの手を掴んで自分へと引き寄せた。
アリスは急なことに倒れ込みそうになり、慌てて体勢を整えようとする中、またしても手の甲に軟らかいものが当たる。
二度の驚きに、アリスは体勢を整えることをすっかり忘れ、そのままアスの胸に飛び込んでしまった。
「アリス、大胆だな〜。あははははは、可愛い!ちっさい!!」
「ぇ、と・・・・・その・・・・あ、あの・・・」
何をどう突っ込めばいいのか分からなくなって、アリスは混乱した。
その内にも、不意に出てしまったものを仕舞い込んで、シトがふらふらと立ち上がった。
アスはまだアリスを抱きこんで堪能している。
「・・・・そこの変態、先程アリス様に何をしました・・・・」
「あ、シトくんじゃん。てゆか、君に変態呼ばわりされたくないんですけど。」
ここでいつもはお茶らけているアスが、シト相手に強気に出た。
微かにシトの髪が、逆立った・・・・ように見えた。
「ほぉ、それは是非聞きたいですね。理由を。」
「だって君、アリスに名前呼ばれたくらいで耳出したでしょ。しかも何?ただでさえ敏感な耳を、アリスに触ってもらえたからって、いつになく気持ち良さそうだったじゃん。シトくんのエッチ―!変態―!!」
そこで突然、シトから放出されていた殺気が消えた。
アスは愚か、アリスまで驚いている。
「・・・・・・・・・・シト?」
「あ、あれれ?もしかして、シトくん・・・・・・・泣いてる?」
瞬間鋭いものがアスの頬を掠める。
掠めたものはそのまま壁へと激突すると、ぽとりと落ちた。
アスの頬から生々しい血が流れる。
だが、アスもアリスもただシトを見ていた。
シトは微かに微笑んだ。
とても辛そうに・・・・・・
「すみません・・・・・・当てる、つもりは・・・なかったのですが、手元が、くるっ・・・て―――――――」
「!!!?―――――シトっ!」
月明かりでも分かる青が、ゆっくりと音もなく闇に吸い込まれていく。
だんだんと見えなくなるその姿は、まるで、彼自身が影であるかのように思わせた。
夜は嫌い、皆消えてしまうから。
そう、夜の世界はどうしても人を惑わし、喰らう。
でも私は、倒れていくシトを、ただ見ているだけだった。
壁に当たってそのまま落ちたグリフも、垂れ流しながら走って床に付いてしまった血も、全てが異常だと思った。
でも私は、そう、彼に魅せられていたのだ―――――――――
end
第6話 〜闇は人を惑わし、喰らう〜
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