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Alice's Watch



「うんうん。アリスはちゃんと気付いてたみたいだけど・・・・・こっちはどうなのかな?」


アスはシトの肩を叩こうとした。

すると、ある視線に気付いた。

体に悪寒が稲妻のように駆け巡った。


「・・・あ、あれぇ?なんか、寒気がしてきたんだけど。何だろコレ。どこから―――――!!!?」


全身が凍りついた。

見るんじゃなかったと思った。

しかし、後悔先に立たずである。

アスはこれを乗り越えれば、もう何も怖くないような、そんな風に思えた。


「ぁ、あは〜・・・鏡越しからの殺人ビームは、さすがに初体験だよ〜?ホント、毎回驚かされるよ!その、静かな・・・・・攻撃・・・・」


目を離すにも離せないこの状況。

アスは血を吐く思いをした。

何故ならこれは、外だけでなく、内からの精神破壊も充実しているからである。

その攻撃方法は何とも簡単。

部屋にある鏡だけを使用して、あとは自分と相手が映ればよし。

コツはじっと相手を見ていること。

あぁ、ちゃんと気付いてもらえるように、何かしらの思いを込めて。

あとは心を通じ合わせて、会話をするのみ。


一方的な。


「あ、あはは・・・・な、流れて、流れてくるぅ。あははははは・・・一方的だぁ〜。これ会話じゃねぇ〜。あは、黒いよぉ〜・・・・・黒過ぎるぅぅぅぅぅ・・・」


相手がある程度壊れてきてから止めましょう。


「ねぇ、何してるの?シト・・・」


「アリス様、何もありませんよ。ですが、何か言いたげなお顔をなされていますね。何なりと言って下さって、構いませんよ?」


信じられないほど、輝かしい笑顔である。

なんか、テンションも違う。


「シトの・・・・それ・・・・」


アリスは、少し伏せがちに視線を送る。

その先はシトの頭、に付いているもの。

大分興味を持ったらしい。

その証拠に、それが揺れるたびにアリスの瞳も同じように揺れている。

そう、当のシトは、とてもご機嫌なのです。

ですが、アリスは気付いていませんでした。

シトが一瞬、意地悪い笑みを見せたことを・・・・。


「・・・私の、何ですか?最後まで言って下さい。でないと、私としても行動しかねます。」


他人の目から見たら、うわ・・・と言いたくなるその言葉は、明らかにわざと言っているものである。

そう、他人の目からすれば、それは一目瞭然、なのだが、不思議なことに言われている本人は、そうとは気付かないのである。


「ぁ・・・・・えと、その・・・・その耳・・・」


言っている最中も、やはり目で追っている。

シトがわざと動かしているのだが。


「耳がどうかしましたか?」


「その、白くて、ふわふわした耳・・・・・・私に・・・」


シトはその先を待った。

笑顔で耳を動かして待っている。

その言葉が、ついに――――――




「・・・私に・・・・・・・ちょうだい。」




一瞬耳が飛び跳ねた。

それでもシトは笑顔のままだったが、笑顔のまま驚いたようだ。

アリスもはっとして言い直す。


「あっ・・・・ちが、えと、触りたくて・・・その・・」


慌てて言い直した後、ばつが悪そうに下を向いてしまった。

その時、少しだけ風が吹いた。

髪をなびかすその風に、アリスは顔を上げると、目の前には手が差し出されていた。

それに視線も低くて、アリスが見上げられる形になる。

そう、シトは片膝を付いていた。

アリスは小さく苦笑した。

だって、また君はそうやって私に拒否する事も、躊躇う事すら許さない。

ほら、また私は手を伸ばしてる。


そして君はまた当然のように掴んで・・・・・・





 

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