Alice's Watch
3
「うんうん。アリスはちゃんと気付いてたみたいだけど・・・・・こっちはどうなのかな?」
アスはシトの肩を叩こうとした。
すると、ある視線に気付いた。
体に悪寒が稲妻のように駆け巡った。
「・・・あ、あれぇ?なんか、寒気がしてきたんだけど。何だろコレ。どこから―――――!!!?」
全身が凍りついた。
見るんじゃなかったと思った。
しかし、後悔先に立たずである。
アスはこれを乗り越えれば、もう何も怖くないような、そんな風に思えた。
「ぁ、あは〜・・・鏡越しからの殺人ビームは、さすがに初体験だよ〜?ホント、毎回驚かされるよ!その、静かな・・・・・攻撃・・・・」
目を離すにも離せないこの状況。
アスは血を吐く思いをした。
何故ならこれは、外だけでなく、内からの精神破壊も充実しているからである。
その攻撃方法は何とも簡単。
部屋にある鏡だけを使用して、あとは自分と相手が映ればよし。
コツはじっと相手を見ていること。
あぁ、ちゃんと気付いてもらえるように、何かしらの思いを込めて。
あとは心を通じ合わせて、会話をするのみ。
一方的な。
「あ、あはは・・・・な、流れて、流れてくるぅ。あははははは・・・一方的だぁ〜。これ会話じゃねぇ〜。あは、黒いよぉ〜・・・・・黒過ぎるぅぅぅぅぅ・・・」
相手がある程度壊れてきてから止めましょう。
「ねぇ、何してるの?シト・・・」
「アリス様、何もありませんよ。ですが、何か言いたげなお顔をなされていますね。何なりと言って下さって、構いませんよ?」
信じられないほど、輝かしい笑顔である。
なんか、テンションも違う。
「シトの・・・・それ・・・・」
アリスは、少し伏せがちに視線を送る。
その先はシトの頭、に付いているもの。
大分興味を持ったらしい。
その証拠に、それが揺れるたびにアリスの瞳も同じように揺れている。
そう、当のシトは、とてもご機嫌なのです。
ですが、アリスは気付いていませんでした。
シトが一瞬、意地悪い笑みを見せたことを・・・・。
「・・・私の、何ですか?最後まで言って下さい。でないと、私としても行動しかねます。」
他人の目から見たら、うわ・・・と言いたくなるその言葉は、明らかにわざと言っているものである。
そう、他人の目からすれば、それは一目瞭然、なのだが、不思議なことに言われている本人は、そうとは気付かないのである。
「ぁ・・・・・えと、その・・・・その耳・・・」
言っている最中も、やはり目で追っている。
シトがわざと動かしているのだが。
「耳がどうかしましたか?」
「その、白くて、ふわふわした耳・・・・・・私に・・・」
シトはその先を待った。
笑顔で耳を動かして待っている。
その言葉が、ついに――――――
「・・・私に・・・・・・・ちょうだい。」
一瞬耳が飛び跳ねた。
それでもシトは笑顔のままだったが、笑顔のまま驚いたようだ。
アリスもはっとして言い直す。
「あっ・・・・ちが、えと、触りたくて・・・その・・」
慌てて言い直した後、ばつが悪そうに下を向いてしまった。
その時、少しだけ風が吹いた。
髪をなびかすその風に、アリスは顔を上げると、目の前には手が差し出されていた。
それに視線も低くて、アリスが見上げられる形になる。
そう、シトは片膝を付いていた。
アリスは小さく苦笑した。
だって、また君はそうやって私に拒否する事も、躊躇う事すら許さない。
ほら、また私は手を伸ばしてる。
そして君はまた当然のように掴んで・・・・・・
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