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Alice's Watch



「“グリフ”って、何?」


二人は動きを止めて、アリスを見た。

しばらく考えて、シトは笑顔でアリスに片方の手を見せた。

掌ではなく、甲をアリスに向け、指を天井に向けて。


「グリフとは簡単に言えば、爪の意です。それも獣の類の。」


説明しながらシトは黒いナイフのようなものを出して見せた。

それはアスに飛んでいったものと同じもの。

そしてそれは、一瞬でシトの指の間に挟まっていたのである。


「因みにぃ、シトくんのグリフはぁシトくんぴったりウサギちゃん〜―――――ワオッ!!」


なんだか、ある意味乗り越えているような気がする。

いや、単に学習能力が欠けていると言うべきか。

折角アリスに見せるために出したグリフも、結局はアスに飛んでいってしまうのだ。

ぎゃーぎゃー騒いでいるアスを無視して、シトは説明を再開した。

最初からアスのことは見向きもしていなかったが・・・。


「そして、これは武器ともなります。アリス様も、お持ちのようですね。もうそちらの使用法はマスターなさったのですか?」


「何を?」


ほぼ即答で返したアリスは、ただじっとシトを見つめていた。

シトはその視線に、どこか沈みながら応えた。


「武器精製アイテムである、クリスタルです。アリス様の耳飾がそうですよ。」


優しい笑顔で、優しい手つきで、そっとアリスの耳飾のクリスタルを持ち上げた。

その際に、シトのモノクルに付いているクリスタルも輝きながら揺れた。


「アリス様は、これでチェシャ猫を倒されたのでしょう。それにしても、美しい金色。よく、お似合いです。」


「・・・・・・青。」


シトが反応するよりも早く、アリスはシトのクリスタルに手を伸ばしていた。

それは無意識のようにも感じられた。

一瞬シトはビクつく。


「ぁ、あぁ、そうですね。私のは青色のようだ。・・・何にせよ、アリス様の前ではどの色も霞んでしまいますよ。」


乾いた笑い声。

どこかぎこちないシトに、アリスは問いもせず、只管シトの色を見つめていた。


「・・・・綺麗な色ね。私はこの色好き。」



ドクン。



一気に心臓が跳ねた。


それは昔言われた言葉と同じ台詞。


改めて実感する。


あぁ、私の隣にアリスがいるのだと―――。


それが私にとって、どんなに幸せなことか、少なくとも今の貴女には分からないでしょう。


アリス、貴女の言葉が、仕草が、存在が、すべてが私の存在理由になる。


今こうして笑っていられるのは、貴女のお陰だから。


だから、私は貴女の隣にい続ける。





例えどんなに貴女に拒絶されようとも―――――――――






end


第5話 〜記憶のない事の不安〜
 

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