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Alice's Watch



「・・・・・・その髪と目の色、闇に染まったんだ?前はとっても綺麗な色だったのに。僕は大っ嫌いだったけどね。」


アスはただ、じっと二人の話を聞いていた。

勿論、シトを最初見たときから気付いていた。

髪の色、目の色、それに雰囲気さえも変わってしまっていることに。

しかし、それでも彼だとわかったのは、他でもない、彼が彼であるということ。

ただそれだけ。


「そうそう。こんな所にまで来た目的を忘れてたよ。」


その言葉でシトが構える。

それを見た猫は、愉快そうに笑う。


「心配しなくてもいいよ?アリスを連れ戻しに来たんじゃないから。まぁ、連れて行こうと思ったんだけど、僕の影じゃ相手にならなかったみたいだね。」


影、影と言えば、さっきから見当たらないような気がする。

この微笑み続ける猫の・・・。


「そうか。気配を一切感じなかったのは、映像だったからか。君がこんな所まで来るはずがないしね。」


「なんか失礼な言い方だなぁ。幻に幻を作るのは、結構めんどくさいんだよ?それはそうと、目的目的。ねぇ、ウサギ―――――――時計、止まってるよね。」


ここで初めてシトはチェシャ猫の方を向いた。


「よく、ご存知ですね。だがしかし、この時計は止まっているどころか、指針はおろか、時数も消えてなくなっています。」


ジャラリとポケットから出す。

金色のアンティークな時計は、シトの前でくるくると回った。

シトは驚く。


「な、時数の12が刻まれてる?!」


時計には何も刻まれていなかったのに、勿論指針は相変わらず無い。

何故時数の12だけが・・・・・。


「針が未来を表すなら、過去はそれが通ってきた時数。」


猫は歌うように言う。

シトは再び顔を上げた。

猫と目があったかと思うと、また風が部屋を包み込む。

さっきよりも強い風。

シトとアスは自然と目を瞑ってしまう。



(過去と未来が消えたなら、まずは過去を捜すといい)



気付けば本の山は元通りに溢れかえっていて、誰かが来たなんて思わせないほどだった。

勿論、少女はいなくなっていた。






end


第4話 〜訪問は君の身体の異変と伴に〜
 

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あきゅろす。
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