Alice's Watch
3
「・・・・・・その髪と目の色、闇に染まったんだ?前はとっても綺麗な色だったのに。僕は大っ嫌いだったけどね。」
アスはただ、じっと二人の話を聞いていた。
勿論、シトを最初見たときから気付いていた。
髪の色、目の色、それに雰囲気さえも変わってしまっていることに。
しかし、それでも彼だとわかったのは、他でもない、彼が彼であるということ。
ただそれだけ。
「そうそう。こんな所にまで来た目的を忘れてたよ。」
その言葉でシトが構える。
それを見た猫は、愉快そうに笑う。
「心配しなくてもいいよ?アリスを連れ戻しに来たんじゃないから。まぁ、連れて行こうと思ったんだけど、僕の影じゃ相手にならなかったみたいだね。」
影、影と言えば、さっきから見当たらないような気がする。
この微笑み続ける猫の・・・。
「そうか。気配を一切感じなかったのは、映像だったからか。君がこんな所まで来るはずがないしね。」
「なんか失礼な言い方だなぁ。幻に幻を作るのは、結構めんどくさいんだよ?それはそうと、目的目的。ねぇ、ウサギ―――――――時計、止まってるよね。」
ここで初めてシトはチェシャ猫の方を向いた。
「よく、ご存知ですね。だがしかし、この時計は止まっているどころか、指針はおろか、時数も消えてなくなっています。」
ジャラリとポケットから出す。
金色のアンティークな時計は、シトの前でくるくると回った。
シトは驚く。
「な、時数の12が刻まれてる?!」
時計には何も刻まれていなかったのに、勿論指針は相変わらず無い。
何故時数の12だけが・・・・・。
「針が未来を表すなら、過去はそれが通ってきた時数。」
猫は歌うように言う。
シトは再び顔を上げた。
猫と目があったかと思うと、また風が部屋を包み込む。
さっきよりも強い風。
シトとアスは自然と目を瞑ってしまう。
(過去と未来が消えたなら、まずは過去を捜すといい)
気付けば本の山は元通りに溢れかえっていて、誰かが来たなんて思わせないほどだった。
勿論、少女はいなくなっていた。
end
第4話 〜訪問は君の身体の異変と伴に〜
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