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Alice's Watch



「!!なっ、気配なんてしなかったぞ!いつの間にっ・・」


アスは叫ぶと、声のする方を見る。

それはリビングの唯一のドア。

だんだんと足音が響いて大きくなる。

シトはその間にも本から下りて、そして呟く。


「・・・・・・・チェシャ猫・・・・・・」


足音は近づいてくる。

近づいて・・・・・・通り過ぎた。


「・・・・あら?何処行った。」


アスはそう言いながらも、緊張の糸をまだ張っている。

瞬間、シトがドアに向かって地を蹴った。

シトが居た場所に本が舞う。


「まさか・・・・・・・アリス!!!」


アスはそれを止めようとした。

何故ならシトはアリスの事となると、周りが見えなくなる。
それは非常に危険なのだ。


「シト!!待つんだ!!!」


その声はシトに届かない。



(クスクス・・・変わってないねぇ。せっかく僕が檻から出してあげたのにさ。)



シトはドアの前で勢いよく停止した。

ドアノブがゆっくりと回される。

シトは今度は逆に地を蹴ってその場から離れた。

次の瞬間、風と共にドアが勢い良く開かれた。

部屋中の本が舞い上がる。



(ふふ、久しぶりだね。ウサギに、神父。僕は、カトライナ・メイデン―――チェシャ猫。)



風は声を乗せて部屋に入ってくる。

そして部屋中の本を巻き上げて山を作ると、その頂上で少女が楽しそうに見下ろしていた。


「・・・メイデン?あの名の知れた財閥のか。どうしてお前がそんな名前を名乗ってるんだ。」


少女はアスの方を向くと、笑顔を向けた。

ぞっとするような笑み。


「それはね。この姿がそう名乗ってたからだよ。僕はカトライナ・メイデンと言う名の少女と、賭けをしたんだ。そして、僕が勝った。ただ、それだけの事だよ。」


「・・・・・・賭け?その娘の体を乗っ取ったのか。」


「さぁ、どうだろうね。それよりウサギ。気分はどう?もう少しで消滅しそうだった君を助けたんだ。感謝してもらいたいね。」


アスの質問を軽くあしらって、今度はシトに微笑みかける。

だが、その言葉はまたもアスに疑問を抱かせた。


「消滅って・・・・・何だよ、それ。シト、どう言う事だ。」


アスはシトを見たが、表情が見えない。


「ははっ!面白いなぁ。そうだぁ。良い事教えてあげるよ。」


シトは未だ喋ることは無い。


「もう少ししたら、君の体に異変があると思うんだけど。その原因について、二つ言っといてあげる。一つは、大切な者の拒み。もう一つは・・・・・高貴なる者の呪い。」


「・・・何故、貴方はここへ来たんですか。どうしてチェシャが私を助けたんです。」


心からの疑問を、少女の姿をしている猫に聞く。

相手が応えるはずもないと、わかってる。

でも聞かずにはいられない。

自分は幽閉されていた。

どうすることもできなかった。

ただ、闇に飲まれるのを待つだけだった。

実際、あと少しで、自分は闇になるところだったんだ。




アリスが、呼んでくれるまでは――――。




 

 

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あきゅろす。
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