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忘却葬送曲
finale後編 1

傍観者の記録@


人の血を流し過ぎて、廃墟だらけの地上はドロドロとした汚泥に覆われたようだった。
前進しようとする僕らを、そうはさせまいと絡み付き、藻掻く体からはまた血が流れ落ちる。

「世界はどうしようもない程に歪んでしまった。ならばいっそ、白紙に戻してはどうか?」

集った科学者達により、八方塞がりな状況を打開するための手段が生み出された。
流れた血も、積もった泥も、全てなかった事に出来る、”歴史忘却”。
僕達の失敗を黒く塗りつぶせる、魔法のような道具だった。

「全て忘れてしまったら、僕達は前へ進めるんだろうか?」

かつてない決断を迫られた人々は、当然の事ながら躊躇した。

戦争の歴史を忘れてしまったら、もっと恐ろしい事が起きるのではないか?
むしろこのまま進んだら、世界は断ち切れない憎しみで滅びるのでは?

広い会議場では様々な意見が飛び交い、相反する考えで対立が起こり始める。
それをじっと眺めていた僕は、やれやれとため息をついて、こう言った。

「実験しよう、それを見て判断すればいい」

本物とそっくりな世界を生み出して、“忘却”を選んだ未来がどうなるのか観察する。
それはいい考えだ、やってみよう、・・・満場一致で僕のアイデアは採択されたのだった。

こうして、レプリカの世界を使用した大規模な実験は始まった。

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あきゅろす。
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