[携帯モード] [URL送信]

忘却葬送曲
finale 前編 9

彼らを眺めていた一つの視点は、改めてその家の外観を見回していた。
懐かしさで滲むその目は、恋焦がれるように、平和な日常の光景を記録していく。

この世界は、順調に「同じ道」を辿っている。実験としては、非常に順調だ。

だが、この先に待っている事を考えると、嬉しさよりも、悲しみが何倍も勝っていた。
これから起こる悲劇を、回避する術はない。

いや、そもそもそんな事をしてしまえば、この世界が存在する理由自体が失われる。
あくまでこれは実験だ。そのために僕は、完全なレプリカを作り上げたのだから。

「分岐」を与えたその瞬間から、この世界は、こちらとは別の道を歩み始める。

それが一体何をもたらすのか、僕は全て記録しなければ。


孤独な人影は、世界を傍観し続けていた。

[*前へ]

9/9ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!