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忘却葬送曲
finale 前編 6

「う〜ら〜め〜し〜や〜」

「あっ、透夜。良かった、今の時間シフト入っていたんだね」

「なかなかいい演出だな、迫力あったぞ」

ハリボテの井戸から飛び出した透夜に、僕達が全く驚かずに言葉を返す。
死装束を身に付け、青白く顔を化粧している彼は、がっくりと肩を落として呟いた。

「・・・ちょっとくらい、驚いて欲しかった・・・何か恥ずかしいよ」

「ふふふ・・・ごめんね、この後時間取れそう?」

「大丈夫、もうこれで終わり。着替えてくるからちょっと時間掛かるけど、外で待ってて」

次のお客が後ろに迫っている事もあり、ここでゆっくり話している訳にもいかない。
お化け用楽屋口へ急いで向かった透夜と別れ、僕達はお化け屋敷から出た。

廊下に飾られている生徒の作品を鑑賞し、窓からグラウンドで始まったイベントを眺める内に、化粧を落とし、制服に着替えた透夜が駆け寄って来た。

「お待たせしました、どこに行きますか?」

「そうだね。・・・ああ、新島君のクラスはどうかな、何をやっているの?」

「確か、喫茶店とか。・・・来ないで欲しいって、新島先輩に言われたんですけど」

首を傾ける透夜に、にやりと口の端を上げた永井さんが言う。

「それは来いって意味だ。じゃあそこに行くとするか、喫茶店なら透夜も休憩出来るからな」

「うーん・・・まあ気になりますし、行きましょうか。3−Aクラスです」

年の離れた兄弟のように、並んで歩き始めた二人の後に続こうと、僕は足を踏み出そうとした。
・・・その瞬間、すぐ背後から奇妙な気配を感じ、急いで振り返る。

しかし、そこに視線の主は無く、祭りで賑わう平常の光景が広がっていた。

「どうしたんですか、真琴さん。何かありましたか?」

前を向くと、透夜が不思議そうに僕を見つめていた。
激しく打っている心臓の鼓動を隠し、僕はいつも通りの表情を取り繕う。

「大丈夫、何でもないよ。・・・俺の気のせい、かな」


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あきゅろす。
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