忘却葬送曲
finale 前編 2
「真琴さん、これ」
「んん、何?」
僕は鍋にかけていた火を止め、自分の後ろに立っている透夜と向き合う。
彼から凝ったデザインのパンフレットを受け取った僕は、目を細めてそれを眺めた。
「学園祭か、楽しそうだね。透夜は当日何をするの?」
「学園祭の実行委員だから、色々と雑用があるんだ。クラスはお化け屋敷をやるよ。・・・真琴さん、来れそう?」
不安そうに尋ねる透夜に、僕はにっこりと笑って言った。
「勿論、必ず行くよ。・・・永井さんも誘ってみようかな」
早速電話を掛けてみると、数コール待っただけで応答した彼は、「行く」と即答した。
永井さんのやや必死なまでの食いつきに、僕は苦笑しつつ通話を切る。
そわそわして待っている透夜に振り返った。
「大丈夫だよ、学園祭楽しみにしているって」
言った途端、彼は嬉しそうに顔をほころばせる。
「良かった、・・・真琴さん、学園祭のフィナーレイベント、楽しみにしていて」
「フィナーレ・・・何か、特別な事をやるの?」
「うん、新島先輩も関わっているよ。・・・俺も頑張るから、絶対見に来てね」
透夜が祈るような声で言ったその言葉は、僕の心に不思議な響きを以て刻まれた。
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