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忘却葬送曲
Sixth Movement 4

山を削って建てられた墓地は、段々と並ぶ無数の墓石が、斜面を沿うように立っていた。

墓石から目を離し、背後を振り返れば、遥か遠くにある広い水平線が見渡せる。
その大海原へ、今まさに、赤い太陽がゆっくりと消えようとしていた。

俺がもし死んだら、この場所に埋めてもらいたい。・・・そう思うほど、穏やかな空気に包まれた、美しい場所だった。

水野家の墓に到着すると、先輩達はごそごそと持っていたビニール袋の中身を取り出した。
極々ありふれたスナック菓子、菓子パン、ジュースの缶だ。

「よく俺達が、仕事の合間に買いに行って食べていた物さ。・・・さて、打ち上げといくか!」

俺に飲み物を手渡した藤堂先輩は、乾杯するように、缶を高く掲げる。
予想外の流れに、俺は目を丸くした。

「えっ、離任式じゃなかったんですか?」

「水野は堅苦しいことが嫌いだったし、「俺達の任期が終わったら、ジュースで乾杯でもして祝おう」って、よく言っていたんだよ」

新島先輩も楽しそうに微笑んで、缶を持つ腕を上げた。
俺も少し迷いつつ、もらった缶を彼らと同じように、夕空へ手向けるように掲げる。

「第34代生徒会会計、水野亮。・・・任期終了、お疲れさん!」

コーン!

缶同士がぶつかり合う、高い金属音が辺りに響き渡った。

プルタブを開けた俺達は、一気に飲み干す勢いで缶を傾ける。

結局、三人とも気合で全部飲みきり、空になった缶を片手にお互いを見つめあった俺達は、誰からともなく声を上げて笑い始めた。

「ははは・・・別に一気飲みするルールはないのにな」

「だってさ、なんか水野がそうしろと言っている気がしたんだよ・・・あはは」

「ふふ・・・本当に、面白い人だったんですね、水野先輩」

俺は茜色に染まっている、雲一つない空を見上げる。
この高い空の上から、彼が笑って俺達のことを見ているような、不思議な感覚があった。


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あきゅろす。
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