忘却葬送曲
Sixth Movement 2
「―以上で、本日の会議を終了します。各自、決定事項を忘れず、明日クラスに伝達してください」
学園祭実行委員長がそう告げると、椅子に座っていた委員達が次々と立ち上がり、こぞって会議室を後にした。
俺も机に広げていた資料を手早くまとめて、それに続く。
放課後の静かな廊下をしばらく歩いていたところで、ふいに後ろから声をかけられた。
「透夜、実行委員会の仕事か?」
「藤堂先輩。はい、今会議が終わって帰るところです」
振り返ると、そこには先日生徒会を離任したばかりの、元副会長が立っていた。
もうすぐ始まる学園祭に向け、中心となって準備を押し進めているのは、前生徒会からの引き継ぎが終わったばかりの新しい生徒会だ。生徒会長だった新島先輩も、もちろん引退している。
新島先輩を通して、俺は藤堂先輩と知り合った。
面倒見のいい兄貴体質の人で、学校に入ってすぐの頃は、彼に色々と支えられた。
「大変だよな、お前も。編入してきて間もないのに、学園祭実行委員なんて面倒だろ」
「そうでもないです、会議で決まったことを伝えるだけですし。当日は忙しそうですが」
編入してきたばかりの俺が、学園祭の実行委員なんかになっているのは、部活や委員会に所属していない人間、つまり暇そうな奴だったからだ。
クラスメート達に押し付けられるように決まってしまったが、別にこういう仕事が嫌いなわけじゃない。
委員会を通じて知り合いも増えたし、俺にとって学校に馴染める、良い足がかりとなった。
「そうか、また何かあったらいつでも相談しろよ。・・・なあ透夜、これからちょっと時間あるか?」
「特に用事はないので、大丈夫ですよ。どこかに行くんですか?」
「ああ、新島も一緒にな。じゃあ先に校門で待っているから、なるべく早く来てくれよ」
「はい、すぐに行きます」
足早に去って行く藤堂先輩と別れ、俺は自分の鞄を取りに行くために、クラスの教室へと向かった。
家の方向が同じ彼らと帰ることは、別に珍しいことじゃない。
しかし今日は、妙に改まった感じだ・・・何か、特別な用事があるんだろうか。
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