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忘却葬送曲
fifth movement 5

「・・・お前達二人は駄目かもしれないが、その子だけなら軍が保護してくれるはずだ。
船まで連れて行こう、俺が一緒なら安全だ」

「助かります。透夜、この人が連れて行ってくれるよ。本当に良かった・・・」

そう言って僕が頭を撫でると、彼は不安そうな瞳で見つめ返した。

「でも、お父さんと真琴は・・・」

「俺達はどうにかするさ。透夜、先に行っていてくれ」

「・・・うん」

多分、聡い彼は全てを理解しているのだろう。
状況の過酷さや、自分に選択肢が無い事や・・・これが、僕達との最後の時間になるかもしれないという事が。

泣き叫びたくなる心を必死に抑え、彼はただ一つだけ頷いたのだ。僕達を困らせないように。

「ただ、この足では長時間歩くのは厳しいな。休みつつ進むしかないか・・・」

痛みに顔しかめつつ、彼はゆっくりと立ち上がった。
血は止まったものの、その傷ついた片足は、体を支えるのもやっとらしい。

「・・・真琴、お前も一緒に行け。怪我した軍人を連れて来た人間をすぐ撃つなんて事はしないだろうし、そもそもお前はこの島の住民じゃない。上手いこと説明すれば船に乗れるさ」

「でもそれじゃ君が一人になってしまう。そんな怪我している状態で置いていけないよ・・・」

「昨日の約束は無くなったわけじゃないぞ、真琴。・・・透夜を頼む」

僕は、彼の祈るような声と眼差しにさらされる。
昨日から僕を苦しめている存在が、また酷く胸を締め付けた。

「・・・わかったよ。あなたも早く足を治療しないといけませんしね、行きましょう」

「ああ、・・・悪いな」

僕は軍人の腕を自分の肩に回し、彼の体を支えた。

「・・・お父さん」

「透夜、俺のことは心配するな。・・・お前はこれから、沢山嫌なものを見なければいけない。
この世界の醜さと、残酷さを知るだろう。だからこそ、忘れないでくれ。お前がこの世界に生まれて来た理由を。
それはこの世界で一番きれいで、大切なものなんだ・・・」

泥と血にまみれた腕を弱々しく上げて、正志は透夜の頭を撫で回した。


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あきゅろす。
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